過去2年間、高校サッカー選手権の東京都予選決勝に進み、「今年こそ」の想いを胸に取り組んでいるのが堀越高校だ。チームを率いる佐藤実監督は、かつて松商学園(長野)で7年間指導し、選手権出場に導くとともにJリーガーを輩出。近年は選手が中心となり、自主的にチームを運営する「ボトムアップ理論」を取り入れており、着実に結果を残しつつある。堀越高校は目標のひとつである選手権出場に向けて、どのような取り組みをしているのだろうか。強豪との試合を戦う上で欠かすことのできない「コンディショニング」と「フィジカルトレーニング」について、佐藤監督に話を聞いた。
――堀越高校は選手主体の「ボトムアップ」式でトレーニングをしているそうですが、フィジカル面のトレーニングはどのように行っているのでしょうか?
長友佑都選手のトレーナーとしても有名な木場克己さんに協力して頂き、体幹バランストレーニングを中心に取り組んでいます。試合の3日前には「キレ出し」という、試合に向けて動きのキレが出るようなトレーニングに取り組んでいて、成果を感じています。
――キレ出しとは、具体的にどういうものですか?
ゴムチューブを足に巻いて、5mほどの距離を片足で交互にジャンプしながら進んだり、体の軸を作った状態で短距離ダッシュをするといった、スプリント系のメニューです。木場トレーナーから「今年はこれに取り組んでみよう」という提案があり、やってみることにしました。いまうちは日曜日に試合をすることが多いので、3日前の木曜日に体幹バランストレーニングと一緒に、キレ出しトレーニングにも取り組んでいます。
――効果はどのように感じていますか?
トレーニングをすることで、身体のベースができましたね。以前は腰痛や股関節周りを痛める選手が多かったのですが、いまは体幹を鍛えているおかげで、ほとんどいません。それによって、より強度の高いトレーニングができるようになったと思います。選手たちは身体の軸を作ることや、頭の位置などにもこだわっていて、プレー中のバランスが良くなりました。
――フィジカル面を鍛えて、試合で良いパフォーマンスを発揮するためには、コンディショニングも重要です。その辺りの取り組みについてはいかがでしょうか?
うちはボトムアップスタイルなので、選手が中心となってトレーニングをしています。そのため、熱が入りすぎるというか、こちらの意図以上に強度が高くなってしまうことがあるんですね。というのも、選手たちは監督である私にサッカーをやらされているのではなく、自分たちの「やりたい!」という気持ちを強く持っています。そこで私がトレーニングの強度をコントロールし、ピッチ外では味の素の栄養士の方に来ていただいて、保護者同伴で休息や栄養についてのセミナーを受けてもらっています。
――選手権予選など、大事な試合に向けたコンディショニングについては、どのような取り組みをしていますか?
2年前、僕が監督になって初めて選手権予選の決勝に進出したのですが、大舞台で緊張もするだろうし、天然芝のグラウンドなので足が攣る選手もいるだろうなと思ったんです。そこで味の素の方に相談したところ、『アミノバイタル』を差し入れて頂きまして、試合の前に選手全員に飲ませました。飲み方も「試合の前日と前々日の寝る前に飲んでみては」とアドバイスを頂いて。アミノバイタルはエビデンスもたくさん出ているので、信頼して選手に飲ませたら、誰一人して足が止まる選手がいなかったんですよ。
――試合に向けて、オフザピッチの部分でどれだけ質の高い準備ができるかがポイントになるのですね。
本当にそう思います。トレーニング後の身体をサポートするために、食事から栄養を補給するのがベースとしてあり、足りない部分をアミノバイタルやアミノプロテインなどを使って補っていく。うちの選手たちはうまく使っていると思います。
――堀越高校として、佐藤監督として、今年はどのような目標を持っていますか?
一番の目標はタイトルを獲ることです。ただ、サッカーは相手がいるスポーツなので、そこだけに集中するわけではありません。うちはボトムアップを取り入れているので、選手一人ひとりが考えてプレーすることの大切さや、日常生活を主体的になって送ることの重要性を認識して、卒業していってほしいと思います。そのため、必要以上に「選手権出場!」「タイトルを獲るぞ!」とは言っていません。勝ち取りたいという気持ちは、選手の内面から湧き上がってくるものだと思いますし、それは周りから与えられるものではなく、自ら勝ち取るもの。昨年の選手権予選決勝に出ていたメンバーも4人いますので、彼らを中心に、悔しさを晴らしてほしいと思っています。
<プロフィール>
佐藤実(さとうまこと)監督
AC長野パルセイロの前身・長野エルザのコーチ&監督、松商学園での指導を経て、2014年に母校・堀越高校の監督に就任。選手が主体的になって取り組む「ボトムアップスタイル」で指導をし、過去2年間で2度、高校サッカー選手権東京都予選の決勝に進出した。