サッカー不毛の地と呼ばれていた能登半島を活性化させるために強化が始まったのが石川県の注目校・鵬学園高校だ。2012年に元サラリーマンという経歴を持つ赤地信彦監督が就任してからは、近隣に人工芝グラウンドが複数完成し、地元・七尾市のサッカー熱が高まったことが追い風となり、指揮官の就任4年目にはプリンスリーグ北信越に昇格。2016年には星稜高校の18連覇を阻止し、初の選手権出場を果たした。今年は2度目の全国大会出場を狙う新興校の寮生がどんな1日を過ごしているのか、密着してきたぞ!

■寮生の一日のスケジュール
~06:10 起床
06:15 点呼・掃除・朝食
07:00~8:00 朝食・自習
08:35~15:00 授業
16:00~19:00 練習・自主練
19:00~21:00 夕食・自由時間
21:05~23:00 自由時間
23:00~05:30 睡眠

学校の敷地内にある男子寮には現在、部員76人中52人が寮生活を送っている。3年前の選手権出場時は地元・石川県の選手のみだったが、現在は長野県など近隣の都市だけでなく、栃木県や群馬県、東京、愛知県、関西からも鵬学園の門を叩く選手がいるそうだ。

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寮生の一日が始まるのは朝6時10分。起床して点呼を済ませると、全員で寮の掃除を行ってから朝食を食べ始まる。食後から8時10分の登校時間までは朝練と自主練の時間で、グラウンドに出てボールを蹴る選手、校内で身体を鍛える選手、勉強に励む選手などそれぞれが今の自分に必要だと感じた取り組みを行う。

8時35分からは授業がスタート。月曜日と火曜日は7限目まで、それ以外の曜日は6限目まで机に向かい15時半前後に授業を終えると、そこからは部活の時間だ。主に練習を行うのは自分たちで管理を行う天然芝グラウンドだが、週に2回はバスで和倉温泉グラウンドに移動し、AチームとBチームがそれぞれ1面ずつ使ってトレーニングをするなど練習環境が充実しているのが鵬学園の自慢だ。

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 全員が目を瞑り「星稜に勝つ!」、「自分自身の長所を出し続ける」、「日々成長」など個人の目標を口にすることで心を落ち着かせてから、練習に挑むのが鵬学園のスタイルだ。対人パスなどウォーミングアップでは笑みが零れる場面も多かったが、ゲーム形式のメニューに移行すると味方を鼓舞する声が増え、練習強度が増していくのが印象的だった。「本番で120%の力を出すためには練習から120%の力を出さないといけない。声出しや一本のパスに拘ったり、基本を徹底している」と口にするのはFW坂本健太(3年)で、多くの選手が鵬学園に来てからの成長を実感していたぞ!

練習を終えるのは19時でそこからは夕食だ。朝食は全員で食べなければいけないが、夕食はそれぞれが好きな時間に食べることができるため、自主練をする選手、寮に戻って入浴や洗濯をしてから食堂に向かう選手などに分かれる。提供される料理は常駐している管理栄養士が調理しているため、「栄養バランスを考えられているので肉や野菜を健康的に食べられる」(坂本)。取材日は豚カツ、筑前煮、ポテトサラダ、玉子とワカメの味噌汁、ゼリーが振舞われていた。誕生日の月にはケーキもプレゼントされ、部屋で誕生日パーティーをすることもあるという。

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食事の際は肉体強化のためしっかり量を食べるのがルールで、全員が特大サイズのお茶碗で白米を平らげる。毎日、サッカー部だけで3升焚きの炊飯ジャーを空にするそうだ。また、ほとんどの選手が当たり負けしない身体を造るためにプロテインを摂取しているという。ただ鍛えるだけでなく、コンディショニングに対する意識が高い選手が多いのも特徴で、鵬学園ではスポーツで活躍するために重要なアミノ酸が摂れる「アミノバイタル® プロ」を、リーグ戦を含めた全ての公式戦で摂取。MF永田貫太(3年)が「自分の持っている力を最大限出し切れる。飲むのと飲まないのとでは大違い」と口にするようにチームに欠かせない戦力となっているようだ。栄養講習会でアミノ酸の重要性を知った坂本はチームで与えられる分だけでなく、自ら購入し、日常的に摂取しているという。

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 夕食を終えると、21時5分の点呼を挟み、23時までは自由時間だ。チームテーマとして、「社会に出て通用する人間の育成」を掲げる赤地監督は選手同士のコミュニケーションを重視。部屋にテレビを置くのは禁止で、選手がそれぞれの部屋に集まって、学校で起きた出来事など他愛もない話に花を咲かせる。スマホでサッカーのプレー動画をチェックしたり、筋トレに励んだり、各々が気ままに過ごせる時間で、忙しい毎日を乗り切れるのはこうした時間があるからかもしれない。

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鵬学園の1日に密着した結果、サッカーに打ち込める充実した練習環境と人間力を高め合えるチームメイトの存在が強さの秘訣だと分かった。「鵬に来て人間的に成長できた。星稜を倒して全国に出たいと思って日々の練習を頑張っているので、サッカー選手としても成長できている実感はある」と話すのは永田だ。今年の3年生は中学時代に選手権予選の決勝で星稜を倒し、新たな歴史を切り開いた先輩たちを観て、入学した選手ばかり。そのため、冬にかける想いは強く、坂本は「チームが一致団結し、やるべきことをやって気持ちを出し切れば絶対に全国に出られると思う」と意気込んでいたぞ!