判断とアイデアを重視した攻撃的なサッカーを武器に、昨年度は4年ぶり10回目の選手権出場を果たしたのが神戸弘陵学園高校だ。1990年代に、6回の選手権出場を果たしてからは低迷が続いたが、谷純一監督が就任した2005年以降は成績が再上昇。2016年と2017年には、U-18年代最高峰の高円宮杯プレミアリーグに在籍した。柏レイソルのMF江坂任選手らJリーガーも輩出する関西屈指の強豪の寮生がどんな1日を過ごしているのか、密着してきたぞ!
■寮生の一日のスケジュール
~06:25 起床
06:30 点呼・朝食
06:45~8:50 自由時間
09:00~13:35(15:20) 授業
14:45(15:35)~17:30または18:00 練習
18:00~19:00 自主練
19:00~19:30 夕食
19:30~20:00 洗濯・入浴
20:45 点呼・部屋の掃除
20:45~22:30 自由時間
22:30~06:25 睡眠
部員のほとんどが兵庫県内に在住する自宅生だが、より高いレベルでのプレーを求めて県外から神戸弘陵の門を叩く選手も少なくない。今年度は静岡県や愛知県、福井県といった中部エリアや、四国地域から来た1年生6名、2年生5名が寮生活を送っている。寮は校内にあるため今年、セレッソ大阪に加入したDF田平起也のように「より長く練習がしたい。身体づくりのために練習が終わってすぐに食事がしたかった」と考える意欲的な選手にとっては恵まれた環境だ。
野球部とバレー部の選手と共に暮らす男子寮の一日は、朝6時30分から始まる。食堂での点呼を終えて朝食を済ませると、8時50分の着席時間までは自由時間。学校の準備を済ませて、のんびりした時間を過ごす選手やグラウンドに移動し、自主練に励む選手などそれぞれが思い思いの時間を過ごす。
授業が始まるのは、9時から。神戸弘陵の選手は、4つのコースに分かれて授業を受けており、5限目までは全員が机に向かうが、6限目からはコースによって取り組みが大きく分かれる。サッカー部の多くが在籍する体育特選コースでは、6時間目に体育の授業として部活動を実施。各部に分かれて、フィジカルトレーニングや走力トレーニングを行うため、DF伊藤一颯(2年=グランパスみよしFC)は「他のチームと比べて、よりサッカーに打ち込める」と口にする。
難関大学の現役合格を目指す特進文理コースが7時間目を終える15時20分以降に部員全員が揃うと、そこからはチーム練習がスタートする。神戸弘陵の特徴は、ボール扱いに長けた選手の育成に注力する点だ。全体練習で、走力トレーニングやフィジカルトレーニングを行うことは少なく、メニューはボールを使ったトレーニングが大半。ウォーミングアップ後に、サッカーの基本である対面パスでサッカーの基礎である止める・蹴るの技術を磨き、ポゼッションのトレーニングに励むのが定番の流れで、伊藤は「神戸弘陵に来てから、基本技術が上手くなった」と口にする。
また、紅白戦の多さもチームの特徴で、取材日も部員全員が4チームに分かれて、11対11のゲームを実施。伊藤が「監督が全てのカテゴリーを見てくれているので、すぐメンバーが入れ替わったり、競争が激しい」と話す通り、アピールに成功すれば、週末の公式戦で上のカテゴリーに昇格できる。DF田中百々輝(1年、FCディアモ)も「ポジションが一緒の選手には負けていられない」と続ける通り、切磋琢磨できるライバルの存在によって、高校3年間で大きく成長できるのだ。
練習環境に恵まれているのも、神戸弘陵の強みと言えるだろう。サッカー部専用のグラウンドは一昨年の4月に人工芝となった。フルコートの脇には、フットサルコートも2面あるため、チームメイトが紅白戦を行っている間もボールを蹴ることができる。ナイター設備や筋トレルームも備えているため、18時に全体を終えてから、自主練に励む選手が多い。「寮のすぐそばにグラウンドがあるので、休みの日も人工芝でボールを蹴れるのは嬉しい」(田中)。
自主練を終え寮に戻ると、19時前後から夕食が始まる。取材日は、ナポリタン、手羽先、タコの酢の物、納豆、具沢山の味噌汁、オレンジ、リンゴといったメニューが並んでいた。土曜日は毎週、カレーライスかハヤシライスが提供されるため、多くの選手が楽しみにしているそうだ。強豪校とあって、身体作りの意識が高い選手も少なくない。田中は、練習終わりにプロテインを摂取。伊藤は、身体を大きくするためにお茶碗大盛りのご飯を食べるようにしている。それでも、お腹が空いていれば、お代わり自由のキムチ、沢庵、ちりめんじゃこといったご飯のお供と一緒に二杯目を食べる。そうした効果もあり、伊藤は15キロ以上も体重増加し、当たり負けしないようになったという。
ただ鍛えるだけでなく、コンディショニングに対する意識が高い選手が多いのもチームの特徴だ。神戸弘陵では公式戦の前にリカバーに重要なアミノ酸が摂れる「アミノバイタル® プロ」を必ず摂取。インターハイなど連戦に挑む際は、より多くのアミノ酸が摂れる「アミノバイタル® GOLD」も摂取している。「走りの練習前に飲んだりもする。飲んだ時と飲んでない時はまったく違って、苦しい時でも頑張れる」と話すのは田中。伊藤は、「スティックタイプで水に溶けやすいので、スッと飲めるのが嬉しい」と口にする通り、飲みやすさも好評で、チームに欠かせないアイテムになっている。
20時45分の点呼を挟んで、22時半の消灯時間までは自由時間。皆で映画を見たり、スマホのウイニングイレブンで対戦するなどしてリラックスした時間を過ごす。点呼終わりにそれぞれの部屋を掃除するのも日課で、じゃんけんやくじアプリで掃除担当を決める際は盛り上がるという。テスト期間中には、学習室に選手が集まり、勉強を教え合うのも寮生ならではの光景だ。
伊藤と田中が「環境が良いので、サッカーに打ち込める」と声を揃える通り、神戸弘陵の強さの秘訣は、恵まれた練習環境と刺激し合えるライバルの存在が強さの秘訣と分かった。昨年の選手権は確かな手応えを掴みながらも、3回戦敗退で終わったため、今年にかける思いは強く、「また選手権に出て、全国で優勝したい」(田中)。伊藤も「昨年の選手権を見て、僕もあのピッチに立ちたいと思った。今年は先輩たちのように全国の舞台に立てるよう頑張りたい」と意気込んでいたぞ!