過去10年間で輩出したJリーガーは20名。昨年度は選手権初出場を果たし、強豪校への階段を急激な速度で駆け上がるのが大阪の興國高だ。今年もすでにGK田川知樹、DF平井駿助、MF樺山諒乃介の横浜F・マリノス加入が内定。ツエーゲン金沢への加入が決まったFW杉浦力斗は特別指定選手としてプロデビューを果たした。今後も更なるJリーガーの誕生が期待される注目校の寮生がどんな1日を過ごしているのか、密着してきたぞ!

■寮生の一日のスケジュール
~07:00 起床・朝食
07:45~8:15 朝練
08:50~15:10 授業
16:00~18:00 練習
18:30~19:00 夕食
19:00~21:30 自由時間・治療・自主練
22:00 点呼 
22:00~23:00 洗濯・入浴・勉強
23:00~07:00 睡眠


 学校のある天王寺区は交通の便が良いため、地元・大阪の選手だけでなく、関西2府4県から通う選手が多数在籍するほか、近年はプロ入りを目指し、北は北海道から南は沖縄県まで全国各地から入学希望者が増えている。昨年からのレギュラーで、内野智章監督が「興國のブスケッツ」と評するMF湯谷杏吏(3年)は中学時代、サンフレッチェ広島ジュニアユースに所属。映像で目にした興國のサッカーに惚れ込み、親元を離れての生活を決意した。彼らのような関西以外の選手が生活するのは、学校近くにある興國の運動部員専用のマンション。風呂・トイレにキッチンが完備された部屋に2人で過ごせる快適さが売りだ。

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 選手の一日が始まるのは朝の7時。身支度を済ませて学校の食堂で朝食を済ませると、校内の人工芝グラウンドで自主練に励む。AチームとBチームはコーンドリブルと1対1で徹底して個人スキルを磨き、それ以外の選手はサッカー選手に必要なコーディネーショントレーニングに取り組む。普段は校内のグラウンドとJ-GREEN堺で各カテゴリーに分かれて練習を行うが、300人近い選手が一堂に会する朝練の光景は圧巻だ。

制服に着替え、8時50分から授業がスタート。選手の多くが普通科・アスリートアドバンスコースに在籍するが、中には難関大学への進学を目指すスーパーアドバンスコースに在籍し、現役で国公立大学に合格する選手もいる。授業時間などはコースによって違うが、それぞれが大学進学後や社会に出てから役立つ知識を日々学んでおり、湯谷は「IP(インテンシブ・プログラム)という授業で身体の仕組みなどについて学べるのは、サッカーにも活きている」と口にするのは湯谷だ。

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練習が始まるのは授業が終わった16時から。J-GREEN堺に移動して練習する機会も多いが、取材日である水曜日はAチームが校内でトレーニングを行う。「個に特化したメニューが多いのが興國の特徴。リフティングから始まり、パスや1対1など個人スキルを伸ばせるのが魅力だった」と話すのは今年、FC東京U-18から移籍してきたDF大矢ショラ(2年)。湯谷は「個人戦術やチーム戦術のトレーニングが他のチームよりも多いと思う。試合での立ち意識を意識したり、頭を使う場面が多く、高校に入ってから戦術面は成長できたと思う」と続ける。独自に行う興國体操や充実したトレーニング設備によって肉体的な逞しさを増す選手が多いのもチームの特徴だ。

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取材の日はなんと湯谷くんの誕生日。運ばれてきたチキンカツの上にはソースでハッピーバースデーのメッセージが!

約2時間練習を終えると寮生は学校近くにある別館で食事を済ませる。自主練を終え寮に戻ると、19時前後から夕食が始まる。取材日のメニューはチキンカツ、ミートソーススパゲティ、千切り大根のサラダ、オニオンスープの4品。メニューはいずれも選手から好評で、カレーや豚キムチなどが人気だという。ご飯とみそ汁はお代わり自由で、カラダを大きくするためにしっかり量を食べる選手が少なくない。カラダづくりのため、お茶碗に山盛りになったご飯を食べていた湯谷は高校に入ってから、身長が10cmも高くなり、体重も大幅に増加した。食後はトレーナーの治療を受けたり、自主練に励む選手が多いのは寮と学校が近い利点だ。

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技術力アップだけでなくカラダづくりにも力を入れている興國には、プロテインを愛飲している選手が多い。湯谷が高校から飲み始めたのは、「アミノバイタル® アミノプロテイン」。練習後や試合後、夜の23時前に毎日飲み続けた結果、本来の技術をより発揮できるようになったという。「レモン味で飲みやすいのも有難い」と口にする湯谷は、水だけでスッと飲める点やお腹にたまらず食事を邪魔しない点が気に入っているポイントだという。

22時の点呼を挟むと入浴と洗濯、勉強を済ませ、23時に就寝する。平日は多忙な日々を過ごしている分、オフはゆっくり羽を伸ばす選手が多い。興國の場合はプライベートも充実して欲しいという内野監督の考えもあり、日曜日にオフを設定。湯谷は高校1年生の頃、年間パスを購入し、毎週のようにUSJに足を運んでいたという。大阪に来たばかりの大矢は、友だちと自転車で大阪城などの観光名所を巡るのが楽しみだという。こうした私生活の充実ぶりが、ピッチでの活躍に繋がっているのかもしれない。

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 選手たちの視線が捉えるのは、高卒でのプロ入りと高校サッカーの舞台での活躍だ。「これからチームの戦術をちゃんと理解して、球際の強や飛び出しなど自分の特徴をしっかり出していきたい。試合に出てチームの力になりたい」(大矢)。「高卒でのプロ入りを目指して興國に入ったので、夢を叶えたい。昨年の選手権は勝ちたい気持ちが強すぎて、いつものプレーができず悔しかったので、今年は全国で優勝したい」(湯谷)。それぞれの目標や夢を叶えるため、充実した毎日を自らの成長に変えるつもりだ。

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