中高生にとって、サッカーがうまくなるために必要なのが「体づくり」についての知識だ。将来はプロになりたい、強豪校で活躍したい、Jクラブのアカデミーに入りたいなど、ヤンサカ読者のみんなには色々な目標があることだろう。体づくりについて知ることは、選手としてさらなる成長につながっていく。

今回「体づくり」について話を伺ったのが、U-19日本代表のコンディショニングコーチを務める、流通経済大学の小粥智浩(おがい・ともひろ)さん。小粥さんはU-20W杯出場をめざす年代別日本代表のコンディショニングコーチとして、選手の指導にあたっている。

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年代別代表チームにとって、体づくりはどれほど重視されているのだろう? 小粥さんによると、育成年代の監督の方々も"体づくりとサッカーのトレーニングの両方をやらないと、世界に出て勝つことはできない"と、選手達に日々、メッセージを投げかけているそうだ。小粥さんは言う。

「U-16、U-19代表チームでは、トレーニングの前にウォーミングアップ兼体づくりを行っています。具体的にはコア(体幹周り)の安定性を高めるトレーニングや、肩甲骨、股関節周りを中心に柔軟性と連動性を高めるトレーニングです。ベンチやサイドベンチ、ムーブメントプレパレーション(コアへの刺激を入れながら可動性を獲得するエクササイズ)、チューブを用いて股関節周囲への刺激を入れるようなメニューを通じて、上半身と下半身を強化しています。世界で戦うためには、技術や戦術に加えて、フィジカル面を高めることは不可欠です。15、6歳から、世界で勝つために体作りをするのは当たり前なんだという意識を持ってほしいと思っています」

練習前にコアへの刺激をはじめとして、軸づくりや姿勢作りをすることで、トレーニング時のパフォーマンスが上がるというデータもあるという。小粥さんが説明する。

「練習前にコア部分(体幹周り)を中心に、筋肉に刺激を入れると片足立ちのバランスが良くなる、あるいは体幹が安定するのでジャンプ力が上がるなど、効果があることがデータからも明らかになっています。

また、FIFA(国際サッカー連盟)も推奨しているのですが、激しいプレーをする前にエキセントリック(伸張性筋活動)の刺激を入れることは、ケガの予防にもなります。とくに育成年代の選手にはおすすめです。ただし、これらのエクササイズをする際に気をつけてほしいのが、"正しいフォームで行うこと"です。たとえば、ベンチをするときにお尻が下がっていたり、背中が反っていたりすると、トレーニングの効果が低いだけでなく、ひとつの箇所に負担がかかるので、ケガにつながることもあります。必ず、正しいフォームで行いましょう」

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小粥さんがスペインに行った際、現地のU-15の選手達が練習前に20分ほど、ジムで体づくりのトレーニングをしてから、練習に参加していたという。

「このような取り組みは日本ではまだあまり見られないのが現状ですが、毎日、筋肉に刺激を入れてからサッカーのトレーニングを行うのは、ケガの予防の観点でも、パフォーマンスアップの観点からもよい試みだと思います。ただし、毎日筋肉痛になるような過度な刺激や、疲れが残るような負荷では、チームの練習に支障が出るので、強度をコントロールしながらやることが必要でしょう」

練習前、グラウンドに着いてすぐにボールを蹴りたい! というのが、サッカー小僧の素直な気持ちだろう。

「決してそれは否定しないですし、その気持ちこそが重要です。しかし、身体づくりの面からも考えてみると、そこでボールを蹴りたい気持ちをぐっとこらえて、10分でもいいので体づくりの筋トレをしてみてはどうでしょうか」

練習や試合で良いプレーをするためにも、ボールを蹴る前に筋トレをすることを、ルーティンとして取り入れてみてはいかがだろうか。体づくりのトレーニングをすることで筋肉に刺激が入り、練習開始から良いコンディションで臨むことができる。それが結果として、良いプレーにつながるのだ。