帝京高校3年の夏にドイツに渡り、現地のU19、U23チームでプレーする冨澤玲太郎くん。恵まれた日本の環境を飛び出し、異国の地で奮闘することで、たくさんのことを学んでいる。インタビュー後編では、トップチームの一員として、セミプロを相手に試合をした感想や、ドイツと日本のスタイルの違いなどについて話を訊いた。海外でサッカーがしたい! という夢を持つ若き選手たちは、ぜひ参考にしてほしい。(インタビュー・文 鈴木智之)

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――ドイツに渡って3ヶ月が経ちますが、行く前と今とで、成長したな、変わったなと感じる部分はありますか?

サッカー面でも成長を感じていますが、オフザピッチの部分でも少しは変わってきたのかなと思います。日本にいたときは、やらなければいけないことを後回しにするタイプだったのですが、今は自分1人なので、自分が動かないとすべてが遅れてしまいます。ビザの手続きや保険のことなども含めて、日本にいたら経験することがなかったと思うので、成長しているなと思います。

――サッカー面で日本とドイツの違いはどこにありますか?

球際の迫力もそうですが、一番は結果に対する意識の違いを感じます。シビアな世界なので、結果を残さないと周りに文句を言われますし、練習でもシュートを何度か外すと、味方から喧嘩口調で言われますからね。誰もが「結果を残さなければ!」という気持ちが強いので、ゴール前で味方にパスを出せば簡単に決まるところでも、強引に自分でシュートを打つんです。日本であれば、絶対にパスが来る場面でも来ないですね(笑)。みんな、ゴールという目に見える結果を残して、上のレベルのクラブに引き抜かれたいという気持ちがあるからだと思います。

――いまはU19、U23カテゴリーでプレーしていますが、トップチームの練習に参加するチャンスもあるのですか?

それはありますね。自分も9月にトップチームでデビューしました。U19、U23の試合で点を決めることができたので呼ばれたのですが、ドイツの良いところは、結果を残せば上のカテゴリーや別のクラブに行きやすいことだと思います。それもあって、ステップアップの場として、ドイツを選びました。

――トップチームでプレーした感想は?

トップの試合はフィジカルやスピードなど、U23と比べても段違いです。判断を速くしたり、ボールの置き所を工夫しないと一瞬で潰されます。クサビのパスを味方に落とすプレーってありますよね? そのときに、後ろから思いっきりチャージしてきますから。ひどいタックルをいかにしてかわすか。その緊張感もありますし、常に結果を残すことを考えているので、1試合、1試合で受けるプレッシャーは日本の比ではありません。

――悩んだり壁にぶつかったりしたことありますか?

日本で試合をした時は緊張したことがなかったのですが、ドイツでは観客も入るので、プレッシャーはあります。ヤジも飛んできますし(笑)。そこでびびっていたらダメなので、点を決めて結果を出すことを頭に入れてプレーしています。日本ではシュートを外しても、「次に決めればいいか」と考えることもあったのですが、ドイツではシュートを一本決めるか決めないかで、自分の扱いが大きく変わります。だから、より集中してプレーすることを心がけています。

――ドイツで悩んだときに、アドバイスをしてくれる人はいますか?

一番そばにいて、親身になってくれるのがアメージングスポーツラボジャパンの方です。ドイツに渡った当初はチームメイトからパスが回ってこなくて、どうすればいいのか相談したら「もっと周りに要求したほうがいい」とアドバイスをくれました。「ピッチの上で印象に残る選手になれ」と言われたことは、いまでも覚えています。試合後、見ている人に「誰が印象に残った?」と訊いたときに、自分の名前が出るようにならないとダメだと。印象を残して、なおかつ点を決めること。ドイツでは、どこでどんなスカウトが見ているかわかりません。実際、チームメイトには1部リーグのホッフェンハイムにレンタル移籍した選手もいるんです。

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――高校時代の後輩や友達から、「自分も海外に行きたい」と相談されることもあると思いますが、どのようなアドバイスをしていますか?

一番大切なのは語学だと思うので、行く国の言葉を、日本にいるうちから勉強したほうがいいよ、とアドバイスをします。あとはメンタルですね。結果を残すことに、どれだけ意識を向けられるか。周りから何を言われても、堂々としていることが大事だと思います。周りに認められることが重要なので、チームメイトに積極的に話しかけて、面白いことをしたりとか。ドイツ人は日本に興味があるので、日本のスナック菓子を持っていったら、「美味しい」と言われて、そこから仲良くなったこともありました(笑)

――冨澤くんがドイツでサッカーに打ち込めているのも、両親が快く送り出してくれたからだと思います。両親に対しては、どんな気持ちですか?

感謝の気持ちしかないです。ドイツで一人暮らしをして、それはすごく思います。日本にいたときは家の事や掃除、洗濯など、すべて母親に任せっきりで、自分はサッカーだけをしていればよかったのですが、いまは全部自分でやらなければいけない環境にいます。自分をドイツに行かせてくれたことも含めて、感謝してもしきれないですね。両親だけでなく、アメージングスポーツラボジャパンのスタッフの方々にも、支えてもらっているおかげで、自分はドイツでプレーできています。周りの人たちへの感謝の気持ちを忘れずにプレーしたいですし、ドイツで活躍して、夢であるスペインリーグへ移籍することが、支えてくれた周りの方々への恩返しになると思います。

ドイツに渡り、サッカーや語学の習得に励む冨澤くん。「一日の濃さが、日本にいるときは全然違います」と話す瞳は、充実感に満ちていた。高校を卒業して、大学や地域リーグでサッカーをするほかに、海外に渡るのもひとつの道である。海外でのサッカーに興味のある人、日本ではできない経験を積みたい人は、真剣に検討してみてはいかがだろうか。大きく成長させてくれる場所が、キミを待っている。

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冨澤玲太郎
生年月日:1998年12月26日
身長/体重:177㎝ 72キロ
ポジション:MF 利き足:右利き
得意なプレー:ドリブルからのパス
小学校:保谷東サッカー少年団
中学校:FCトッカーノ クラブユース関東 高円宮杯関東
高校:帝京高校サッカー部