5月3日~6日のゴールデンウィークにかけて、駒沢オリンピック公園総合運動場や味の素スタジアム西競技場で開催される『2017東京国際ユース(U-14)サッカー大会』。北京、ベルリン、カイロ、ジャカルタ、モスクワ、ニューサウスウェールズ、パリ、サンパウロ、ソウル、ブエノスアイレス、プレトリア、岩手、宮城、福島、茨城、Jリーグ選抜、東京、と世界中から多くのチームが参加する大会だ。

世界の強豪が一堂に会する大会を見て、選手たちがどのようなプレーをしているかをチェックすることは、サッカーのレベルアップにつながる。そこで今回は、前・日本サッカー協会技術委員長の霜田正浩氏に「プレーヤー目線での見どころ」を聞いた。サッカーがうまくなりたい、サッカー観戦力をアップさせたいキミは、ぜひ参考にしてほしい。

霜田氏は「東京国際ユースはU-14の大会なので、過去の試合を見ても、戦術的に洗練されているというよりは、ボールに対してどんどんプレッシャーをかけてくるチームが多くいます」と語る。そこでポイントになるのが「激しいプレッシャーを受ける中で、どれだけ素早い判断ができているか」(霜田氏)をチェックすることだ。

「プレッシャーを受けたときに後ろにボールを戻して、ディフェンスラインで回すことは簡単です。そこで簡単な方を選ぶのではなく、中盤より前の位置でプレッシャーがかかった状態であっても、素早く前方にいる味方にパスを出すことができるか。また、プレッシャーを受けていても、相手をはがして前にボールを運べるかどうか。このように『ボールを持った選手のプレーが、ゴールに向かっているか?』をぜひ見てほしいと思います。日本代表の香川真司や清武弘嗣のように、世界で結果を出してきた選手は、自分でマークをはがすことができますし、ワンタッチで前を向くことができます。厳しくプレッシャーを受けてもゴールに向かってボールを運ぶことができるからこそ、世界で戦うことができるのです」

サッカーはひとつのプレーで局面が劇的に変わるスポーツだ。たとえば、プレッシャーを受けた局面でバックパスをするのか。それとも、前方の選手に縦パスを入れるのか。プレーの判断ひとつで、ゴールに直結する可能性も変わる。

「昨年のボカ対カイロの決勝戦で、中盤でボールを持っている選手がヘッドダウンした状態であるにも関わらず、ゴールに一番近い場所にいるFWをめがけて、正確なロングパスを通したプレーがありました。(29:30)シンプルなプレーですが、ゴールをダイレクトに狙うプレーが成功すれば、点は入ります。その1点で試合が決まることはよくあることです」

日本の選手の場合、中盤でヘッドダウンした状態であれば、近くにいるフリーの味方にパスを出すことがほとんどだろう。そのため守備側の選手も、一発でゴール前にボールを蹴り込んでくるという予測はしない。しかし国際大会では、日常の判断基準にはないプレーをしてくる選手もいる。それが国際試合の醍醐味でもある。

年代別日本代表チームを率いて、海外勢との対戦が豊富な霜田氏は、国際試合の前に選手に次のように話をしているという。

「自分よりも足が速い、体が大きい選手と戦う時に僕がいつも言っているのは『自分から先に仕掛けよう』です。相手よりも先に動いて、先に体をぶつける。主導権を握ってプレーすることが大切です。遠藤保仁が高校を卒業してすぐの頃、私はコーチとして彼と接していたのですが、当時は体が細くて、相手とぶつかるとすぐに飛ばされてしまっていたんですね。そこで『自分からぶつかりに行ってみてはどうだ?』とアドバイスしたことがありました。同じタイミングでぶつかると、体重の軽い方が飛ばされてしまいます。しかし、自分から当たりに行って相手に身体を預けると、相手が当たりに来たときに、勢いを吸収することができるんです」

遠藤選手はぶつかり合いのコツをつかむと同時に、ウエイトトレーニングにも力を入れて、国際試合でも当たり負けしない身体になったという。

「なので、東京国際ユースに出場する日本の選手たちには、身体の大きな相手にもひるむことなく、自ら仕掛けていく気持ちを持ってほしいと思います。日本代表の今野泰幸や山口蛍のように、自分から相手にチャレンジしていくメンタリティを持った選手は、この先、伸びていくと思います。フィジカルコンタクトを避けるのではなく、攻守にわたり自分から戦いを仕掛けるメンタリティを持ってほしいですね」

ヤンサカ読者が東京国際ユースを観戦するときは、プレーヤー目線で『自分ならどう判断する?』という視点で見ると面白いだろう。ぜひスタジアムに足を運んで、世界の選手のテクニック、判断力、そして迫力を感じて欲しい。それが、キミのレベルアップにつながるはずだ。

「2017東京国際ユース(U-14)サッカー大会」の公式HPはコチラ>>

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霜田正浩(しもだ・まさひろ)
東京都生まれ。都立高島高卒業後、三浦知良(横浜FC)らと共にブラジルへサッカー留学。その後、フジタ工業(現・湘南ベルマーレ)や横河電機などでプレー。引退後は京都サンガのアカデミー、FC東京、ジェフ千葉でヘッドコーチを務める。2004年、JFA公認指導者S級ライセンス取得。2010年に日本サッカー協会の技術委員に就任し、14年9月~16年3月まで技術委員長を歴任。ザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチと交渉し、日本代表監督として招聘した。