朝起きて学校へ行く前、あるいは練習前や練習後に、自主練をしている選手はたくさんいるだろう。選手の年代やレベルによって、取り組むべき自主練は様々だが、ボールコントロールのトレーニングはひとりでできることもあり、自主練に向いている。実際、多くの選手が自主練でドリブルやリフティングなどのメニューに取り組んでいるのではないだろうか。このときに、ただ何も考えずにボールに触れるのと、実戦をイメージしてボールを蹴るのとでは、技術の習得に大きな違いがある。

日本を代表するドリブラーである乾貴士選手(エイバル/スペイン)は、高校時代から高速ドリブラーとして有名だった。彼は日々の自主練でドリブルをする際、架空の敵をイメージしてボールを蹴っていたという。つまり、相手の存在を頭で思い描き、その相手をかわすためにはどうすればいいかを考えながら、練習をしていたのだ。

これはすぐに真似できるので、ぜひ参考にしたい。ドリブルをしながら、イメージ上の相手に対してフェイントをかけるも良し、緩急で抜き去るも良し。相手がこう動いてきたら、こうやってかわそう。あるいは、左右どちらかに意識を向けさせて逆を突くなど、イメージを膨らませてやってみよう。これならば、ボールと広いスペースさえあれば練習ができる。マーカーもコーンも不要なので、自主練にはうってつけだ。

この自主練はドリブルという技術の練習だけでなく、イメージトレーニングの要素も含まれている。試合でドリブルをしていて、相手選手が奪いに来ない状況はありえないのだから、敵の動きをイメージして練習をすることで、実際の試合に近づけることができるのだ。

この『想像ドリブル』はガンバ大阪の宇佐美貴史選手も小学生時代からやっていた練習で、原口元気選手(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)は広い空き地に愛犬を連れて行き、犬を敵に見立ててドリブルの練習をしていた。もし家で犬を飼っているのならば、犬の散歩にもなるので一石二鳥だ。

イメージを持つことは、身体を動かすときに非常に重要になる。トラップの名手・ガンバ大阪の遠藤保仁選手は小学生時代、コーチに「カーテンにボールが当たったときのようにトラップしよう」と言われていた。足元にボールが当たる時、ボールに対して衝撃を与えてしまうと、反発して足から離れていってしまう。しかし、カーテンに当たる時のようにスーッと衝撃を吸収することができれば、ボールの勢いを殺し、足元に止めることができる。

ボールを正確に止めようと意識し過ぎると、体全体に力が入ってしまい、結果として足が棒のようになって反発してしまう。そうならないために「カーテンのように」と意識をすることで、身体をリラックスさせて足を動かすのだ。

大切なのは、練習中も試合中もイメージをしっかりと持つこと。人間の身体は、頭で動きをイメージして、脳から指令を出すことで動くようになっている。そして、同じ動作を繰り返すことで体に覚え込ませ、無意識の内にできるようになるのが、技術を身に付けるということなのだ。ヤンサカ読者のみんなも、頭の中でイメージを作って、練習に励もう!