Jクラブのスカウトは、どんな仕事をするのでしょうか? 選手のどういうところを見ているんでしょうか?浦和レッズのスカウト担当部長、宮崎義正さんに聞いてきたぞ!

――浦和レッズのスカウトは、どのような仕事をするんですか?
 スカウトの仕事は、トップチームの短期計画、中期計画によって決まります。たとえば、チームでDFに高齢の選手が多ければ、若くて能力のあるDFを探してほしいと要望があります。それに従って、クラブに必要な選手を見つけるのが仕事です
 ちなみに、海外では他のクラブの強化部や代理人と、獲得の交渉をすることも「スカウト」と呼びますが、Jリーグでスカウトと言えば、国内で新卒の大学生や高校生を獲得する仕事を指すことが多いように思います。日本はヨーロッパとは違い、学校体育が特別に発達しているので、そういうスカウト活動が必要になります。あるいはチーム事情により、すぐに即戦力が必要なときには、スカウトではなく、他のクラブから移籍で獲得することもあります。

――獲得する選手は、どうやって決めるんですか?
 3年生が出場する冬の高校サッカー選手権くらいになると、すでに進路は決まっているので、私たちがチェックするのは、主に2年生や1年生です。良い選手をリストアップしておき、チーム事情に合わせて、今年1年間で誰を獲得するのかを話し合っています。
 最近は、練習に参加してもらった上で、決めるケースが多いですね。特にレッズのサッカーがコンビネーションを重視した内容になっているので、スカウトやGMも見て、練習参加してもらって、監督など現場の感触も加味した上で、GOが出たら獲得する形などが多いです。特に大学生の場合は、そういう流れですね。22歳で入ってくるので、即戦力にならなければ、すぐに期限付き移籍や移籍ということになってしまいます。その選手の人生を左右することなので、全く試合に出られずに、伸び悩んで何年か後にやめてしまえば、声をかけなければ良かったということになってしまいます。そこは慎重にならざるを得ません。
 ただし、高校生の場合は、まだ身体が出来ていないので、18歳で加入して、トレーニングしながら21歳で成功すればいい、とも考えられます。もちろん監督の意見も尊重しながら、長い目で見てクラブとしての判断で獲得をしてもよいかもしれません。

――選手のどういうところを、見ているのでしょうか?
 ポジションごとに見るところは違います。たとえばFWなら、ひとつは高さ。身長は大きくないけど、ジャンプ力があって競り勝てるとか、逆に身長は高くてもジャンプ力がなくて負けたりする。それも含めて高さという部分。あとはスピード、技術、身のこなしやアジリティー、身体の使い方や手の使い方が上手だったり。
 大きく言えば、技術、スピード、高さの3つですね。昔はどれか1つが秀でていれば、と思っていましたが、残りの2つも、1つは平均以上でないとなかなか成功しないなと個人的に思います。
 あとは、そういうものの他に、ボールテクニックや身体能力がそれほどではないのに、なぜかスルスルと抜ける選手もいます。たとえば、長谷部誠が高校生のときにすごいと思ったのは、「パスを通すときに相手の重心を見ている」というところ。相手の左足に重心がかかっていると思ったら、左足のすぐそばに、ビュッと速いボールを通せば足が出ないから通ると。だから、長谷部は簡単にビュッと出していましたね。重心がかかっていない足の側だと、足が伸びてボールが引っかかってしまう。パスもドリブルも、相手の重心がかかった足の近くをねらって、抜くことを考えていると、よく言っていました。

――指導者から話を聞いて、獲得の参考にすることは多いですか?
 多いですね。たとえば、鈴木啓太を獲得したときは、はじめは違う選手を見に行っていました。すると当時のGMだった横山謙三さんが「あの選手、技術的にはそれほどでもないけど、相手の嫌がるところに顔出しをする。面白いから、追いかけてみよう」と。
 そのとき鈴木啓太は国体選抜に入っていて、選抜の先生に話を聞くと、やはり技術的には飛び抜けていないと。だけど、彼はすごく人間性が良い。新3年生なのに、荷物の片付けとか準備とか、率先して1年生と一緒になってやっている。みんなで早くやってしまおう、と。すごくみんなをまとめる力があった。色々な話を聞いていると、こいつすごく良いやつだなって、僕のほうがサッカーよりも人間として惹かれていき、好きになってしまいました。プレーを失敗しても、それを補うくらい人に気を遣えたり、みんなのために犠牲になったり、そういうものが垣間見えて、彼がひとりチームにいると助かると、そのチームの監督に言われました。それを当時のGMに報告したら、「取りに行け。そういう奴は絶対に伸びる」と。
 実際、伸びましたね。アテネ五輪では本大会に出られなかったけど、彼はそれに負けず、A代表にも入りました。どんな仕打ちを受けても、鈴木啓太はいじけたりせず、必ずプラス思考でやっていける。彼はそういう性格で、お父さんお母さん、親族のDNAとしてあったんだろうと思います。

――スカウトは、選手の人間性を重視しているんですね。
 そう思います。もちろん、人間性が良くてもサッカーが全然ダメなら話にならないけど、サッカーが上手で、さらに人間性を鍛えれば、もっとすごい選手になれる。そう考えてほしいです。
 人間性で言えば、小野伸二も素晴らしかったです。彼は、当時38歳の僕よりも大人でした(笑)声や仕草は子どもだけど、人にすごく気を遣う。テーブルにお茶を出したり、座布団を出したり、それは作られたことかもしれないけど、すごく自然だった。小学生の頃から厳しく育てられて、仲間や周りを気遣うと、それが自分に返ってくると。あとは、とても思慮深い子でした。彼は大人が何か言ったことに対して、カーッと怒るのではなく、「なぜそういうことを言うんだろう?」と理由を考えます。小野の家は10人兄妹で、自分よりも年下の3人の子たちに対して、お兄ちゃんみたいな形で、責任感を持ってやっていました。すごく大人でしたね。こんな高校生がいるんだと思いました。
 ただサッカーが強ければ、それでいいわけじゃない。浦和の街にあるレッズというクラブで、自分たちが良ければいいのではなく、日本のサッカー、あるいは世界のサッカーをしている人たちが全員幸せになってほしい。その理想を忘れたらダメだという気持ちで、我々スカウトも仕事をしています。