桐蔭学園高校の主将として、2020年度の選手権出場に貢献したDF中島駿乃介がカンザス州の2年生大学へと進学。日大明誠高校で技巧派として注目を集めたMF五十嵐圭暉もサッカー選手としての成長を目指し海を渡った。今では当たり前となったアメリカへのサッカー留学する選手が増えているのは男子だけではない。2018年度の全日本高校女子サッカー大会で星槎国際高校湘南を日本一に導いた黒柳智世さんもアメリカへの進学を決意した女子選手の一人だ。
■英語に不安があっても、万全のサポートを受けられる
チームメイトの多くが国内での進学を決める中、黒柳さんは「アメリカのサッカーは女子サッカーの中でとてもレベルが高い。今まで日本でやってきた自分の能力がどれだけ通用するか試したかった。それに海外でサッカーをやってみたかった」とアメリカ行きを決意。英語に関わる仕事に就く父親に「今後は、より英語が必要になってくる」と背中を押されたことも決め手になったという。
留学のサポートを受けたのは、野球・テニス・ゴルフといった選手だけでなくスポーツマネジメントやコーチなどを目指す高校生の留学を手助けしてきた「アスリートブランド」。元々は一切、英語を喋れなかったが高校サッカーを引退した2月後半から半年間「アスリートブランド」が提携する塾にほぼ毎日通い、日常生活に必要な英語を身につけた。9月に留学先であるルイジアナ・テック大学に渡った当初は、現地の流暢な会話に耳がついていかず聞き取りに苦労もしたが「チームメイトが話しかけてくれたので、打ち解けやすかった。凄くフレンドリーなのも有難かった」と振り返る。
■大学最高峰のリーグで新人賞を受賞
アメリカはリーグのカテゴリーに応じて部活動のプレー時間が決められている。ルイジアナ・テック大学は、大学最高峰リーグである「NCAAディビジョン1」に所属しているため週に8時間まで練習が可能。日本のように2部練習をすることはなく、集中して練習と勉強の両立がしやすいのが特徴だ。授業も英語に堪能なチームメイトのサポートを受けながら進めることができたため、昨年度は優秀成績者として賞を受け取ることができた。「日本よりも先生とフレンドリーに話せる。分からないことがあれば、すぐに聞ける。自分から先生とかかわりに行けば気にかけてもらえるのが、有難かった」。また、勉強や私生活をサポートしてくれるチューターがついてくれるのも留学生にとって大きい。
スポーツに力を入れる大学が多く、施設が充実しているのもアメリカ留学のメリットだ。ルイジアナ・テック大学は各クラブに専門のグラウンドが用意されており、校内には最新鋭の機器が揃ったジムもある。サッカー部は新たな施設を建設中だ。「テクニックは日本の方が上だけど、足の速さなどフィジカル面は海外の選手の方が上だった」と話す通り、最初は戸惑いもあったが筋トレの成果もあり、日本にいた頃よりも対人が強くなった。高校まで務めたセンターバックではなく、ボランチという新たな持ち場でプレーしたがポゼッション志向が強いチームにマッチ。リーグ戦、トーナメントを含めほぼ全試合に出場し、リーグの新人賞を受賞した。
■奨学金で生活を賄えるため、サッカーに集中できる
「ただやらなきゃという気持ちでサッカーを頑張っていた」と振り返る高校時代とは違い、大学に入ってからはよりサッカーと真摯に向き合うようになったのも留学による大きな変化と言えるだろう。常に万全のコンディションでプレーするため、毎日の練習後に身体のケアをしてもらうようになった。カロリーが高いメニューが多いアメリカならではの食事を避け、大学内の食堂で身体の良いメニューを摂っている。大学卒業後もサッカー選手としての活動を最優先に考えているが、留学経験を活かし英語関係の仕事も視野に入れている。
何より魅力なのは金銭面だ。アメリカの奨学金制度はとても充実しており、留学生でも受けられる種類が多い。サッカーの実力が評価された黒柳さんは全額負担を受けており、毎月支給されるお金によって家賃や食費などを賄えている。ルイジアナ・テック大学が所属する「NCAAディビジョン1」はスパイクや練習着など活動に関わる用具を提供してもらえるチームが多い。「欲しい物がある時くらいしかお金は使わない」と黒柳さんが話す通り、金銭的な負担が少ないのも留学のメリットで、勉強とサッカーに加えバイトにも精を出さなければいけない日本の大学との違いは大きい。女子選手は男子選手に比べて奨学金が受けやすいのも魅力だ。また、昨年末は新型コロナウィルスの感染者が多かったが、ワクチン接種が進んでいるためアメリカはこれまでと変わらない生活を取り戻しつつある。黒柳さんも接種済みで、大学生活の2年目を過ごすため8月に再びアメリカに渡ってからは本格的なキャンパスライフが送れる。
アメリカで充実したキャンパスライフを送る黒柳さんは、留学についてこう話す。「テクニックは圧倒的に日本人選手の方が高いので、高校を卒業した女子選手なら試合に出られるチャンスはあると思う。ネイティブな英語が学べるし、他国からの留学生を含めて海外の人とたくさん繋がれるのも留学の魅力。日本から出る経験はとても大事。何かしら得られる物も多いので、より多くの人に挑戦して欲しい」。留学を考える女子選手は、ぜひアスリートブランドのHPをチェックして欲しい。
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■スポーツ留学アドバイザー古屋俊さんのワンポイント講座
日本では日本一を経験し、大学は女子サッカー大国アメリカへ挑戦した智世さん。実際トップレベルでプレーしてる中、日本の方が技術は上?と感じるそうです。
サッカー専用スタジアム、スパイクなどの身の回りの物は全部支給という待遇。かつ、週に行える練習時間も決まっているため、サッカーと勉強それぞれ集中できる環境が整っているのがアメリカの大学サッカー部の特徴です。
渡米前は勉強が好きではなく、中々英語力も上がらなかった彼女が1年時終了時には成績優秀者にも選ばれるなど、文武両道を達成できるのもアメリカ大学サッカー留学の特徴です。
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