<質問>

走れる体力をつけたいんですけど、どうしたら良いですか?


<回答>

ものすごくシンプルな質問ですが、奥の深い質問でもあります。


私がこの質問にシンプルに答えるとしたら『サッカーをすることによって、サッカーで走れるようになることが最も効果的である』となります。サッカーのフィジカル的な特性としては、『常に動く方向とスピードが変化し、「いつ、どこに、どのくらいのスピードで走るのか」ということが求められます。この判断なくしてサッカーで走れるようにはなりません。個人・グループ・チーム戦術を実践するサッカーのトレーニングの中で、判断したことを身体を動かして実践することを積み重ねていくのです。


走れる体力をつけようとした時、陸上競技的に長い距離を延々とランニングしたり、中距離を高強度で追い込んで走ったり、ピッチの端から端までのダッシュを何十本と繰り返したりしてしまうことを多く耳にしますが、これらの運動はサッカーの競技特性と一致していません。サッカーの試合は90分ですが、実際にプレーしている時間(アクチュアリー・タイム)は約60分。そのうちの約70%はウォーキングとジョギングなどの有酸素運動、残りの30%はスプリントや連続した動きです。その30%の内の9割が30m以下、更にその5割が10m以内、というのがサッカーのゲームの中身です。


人間の身体はトレーニングしたことに適応していきます。サッカー的ではない走りのトレーニングは、「トレーニングをした」という充実感を得るのかもしれませんが、その後サッカーをした時に、動き辛さを感じませんか?何故なら、そのトレーニングがサッカーの動きに即していないからです。


私がボールを使わないでトレーニングをする時は、1,サッカーをする準備をするため、2,動きの質を上げるため、の2点を目的としています。後は、サッカー的に技術と判断を伴ったトレーニングの中で、サッカー的に走れる体力を養います。トレーニングの習慣的に、追い込んだトレーニングをしないと不安になる選手も多いかもしれません。しかし、競技特性から離れた走り込みはゲームには活かされません。追い込み過ぎて怪我をしてしまいプレー出来なくなっては本末転倒です。サッカー的なトレーニングで身体をサッカーに適応させてゲームに臨む。そして「試合に勝ちたい」という思いで、持てる体力を駆使してギリギリの所で戦う。これが最も良いトレーニングとなり、この繰り返しがサッカーで走れる体力を養っていくのです。


ただ、ゲームに良い状態で臨まないと走れなくなるので、試合に向けた前日や前々日は試合当日に疲労が残らないように気を付けなければなりません。我々も、サッカーに必要な要素を試合当日に疲労が残らないようにデザインして取り組んでいます。サッカーに適応した状態の選手達は、頭も身体もフレッシュな状態でゲームに臨み、キレ良い動きを出来るだけ長く続け、ゲームの最後まで走り続けることができるのです!