<質問>

ボランチとしてセカンドボールを拾うには、フィジカル的な要素ではどのようにトレーニングすればよいでしょうか?


<回答>

ボランチの選手に限らず、セカンドボールを拾うためには、以下の三つの要素が必要になります。


1.ボールの落下地点を予測したポジショニング

2.動き出しの一歩から数メートルの速さ

3.コンタクト・スキル


フィジカル的な要素としては2と3です。これらの能力を強化するためのトレーニングを紹介します。


2の「動き出しの一歩から数メートルの速さ」という課題に対しては、まず、どの方向にも動き出せる構えから、進みたい方向に対して最も力が入る位置に最初の一歩を接地することが重要です。そして、二歩目、三歩目も同様に大きな力が得られるように進めた足に重心を乗せて推進力を得続けることが大切です。


例えば、12時の方向を向いて構えていて、10時の方向に素早く移動したいのであれば、右足を4時の位置に接地します。ただし、つま先を10時の方向に向けるのではなく、股関節を少し外側に開いてつま先は2時の方向に向けて接地します。そして、拇指球で地面を押すのです。スタンスが狭くても広くても得られる力は弱まるので、最も大きな跳ね返りを感じるスタンスを見つけて下さい。そのスタンスで拇指球に体重を乗せる接地が、進みたい方向に最も力が入り、素早い一歩目につながります。またこの接地方法はスリップする確率も下げてくれます。同様に全方向に対しての一歩目の接地のポジションを探して身につけます。


10時方向に向かうときの一歩目の右足の位置

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8時方向に向かうときの一歩目の右足の位置

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具体的なトレーニング例としては直径4mほどの円状にマーカーなどの目印を12時から1時、2時、3時・・・と12個置いてみます。そして円の中心に立ち、進みたい方向に最も力が入る接地で、12時方向への一歩目を踏み出します。始めは自分で決めて動き出し、その後は他の人に言われた番号へ素早く移動する、といったようにアクションとリアクションの両方でトレーニングすると効果的です。そして、二歩目、三歩目の足にもしっかりと体重を乗せて地面を押して進んでいきます。大股で進もうとしてしまい、重心より前に足を接地してしまうと、進行方向に対してブレーキの力が働いてしまうので、気をつけて下さい。


次に3の「コンタクト・スキル」に関してです。ルーズボールを近くにいる相手より先にボールに触れてマイボールにするためには、最も安定して強く当たれる体勢でコンタクトするか、その体勢で相手とボールの間に自分の体を入れる必要があります。


その体勢を身につけるためには、まずは二人並んで同じ方向を向いて2mほど離れて立ちます。そして同時に近寄り体をぶつけ合います。その際、ショルダー・タックルという言葉がありますが、肩から相手に当たろうとするとバランスを崩しやすくなるので、お尻、細かくは大転子(骨盤と大腿部がつながっているお尻の外側の硬いところ)から当たっていく意識で、結果的に肩も当たっているという体勢でコンタクトしてみて下さい。そして最も安定して強く当たれる重心の高さを探します。この体勢が見つかったら、常にその体勢で挑めるように繰り返しトレーニングします。ボールなしでトレーニングした後は、先ほどと同様に並んだ状態の間からボールを出してもらい、そのルーズボールを奪い合うトレーニングが単純ですが非常に効果的です。


このコンタクト・スキルのポイントは意外に知られておらず、できる前と後では当たりの強さが全く違う自分を感じることができるはずです。予測、動き出しの一歩、コンタクト・スキルを身につけて、一回でも多くのルーズボールをマイボールにして下さい。重要な局面でのその一回が勝敗を左右するのがサッカーです。