<質問>

フィジカル面で600mを10本、1分50秒で一周するのはサッカーに役立ちますか?


<回答>

このメニューは、非常に陸上的なトレーニングですね。マラソン男子の世界記録が2時間2分57秒、平均ペースは343m/分。女子の世界記録が2時間15分25秒、平均ペースは312m/分。今回のメニュー、600mを1分50秒で走るとペースは327m/分。つまり、このメニューは男子と女子の世界記録の平均ペースの間のスピードになります。ただし、マラソン選手はこのペースで走っても乳酸を溜めずに走れるようにトレーニングされていますが、サッカー選手ですと乳酸がどんどん溜まっていくペースなので、乳酸に耐えるようなトレーニングになります。それを600m×10本で6,000m。サッカーのゲームにおいて、乳酸が溜まる強度の運動は約1,500m程なので、4試合分の乳酸的運動をしていることになります。ただし、サッカーのゲームにおける乳酸的な1,500mは、走る方向とスピードが常に変化する中で動いているので、直線的に同じペースで走るトレーニングとは、使う筋肉も異なってきます。私も選手時代に似たようなトレーニングをチームで行ったことがありますが、たくさん走ったのに、サッカーをするとすぐ疲れてしまったり、サッカー的に動き辛さをも感じました。『人の身体はトレーニングしたことに適応してくる(SAIDの原則)』という大原則を考えれば、陸上の中長距離的なトレーニングをしても、サッカーの動きに適応してこないのは当然です。

サッカー的に乳酸系のトレーニングをするなら、少人数の対人形式や様々な動きを取り入れたサーキットなどが有効です。陸上の中長距離的なトレーニングは、やった感や苦しさに耐えた充実感などが生まれるかもしれませんが、サッカーの競技特性とは異なっているので、やればやるほどサッカー的な身体からかけ離れていってしまいます。また、大事な試合で苦しい局面を乗り越えられるのは、苦しいトレーニングに耐えたからではなく、『負けたくない、負けられない想い』があるからだと考えています。以上、一つの価値観として受け取ってもらえればと思います。