<質問>

僕は足が遅いです。でも速くなりたいです。どうしたら速くなれますか?


<回答>

速くなりたい!と思っていることが、まず最初のハードルをクリアーしていますね。足が遅い選手達の多くが、「自分は生まれつき足が遅い」とか「足の速さは遺伝だから今さら速くはならない」といったような考え方をしているのではないかと思います。しかし、足が遅いのには、スピードを落としてしまう原因となる要素があり、それはトレーニングによって改善出来る部分が多いということです。

改善できる代表的なものを幾つか挙げてみたいと思います。

まず、トップスピードを出したい時に『全力』で走っていませんか?全力で走ろうとすると、力みが生じて動きのスピードを落としてしまいます。トップスピードに至る時の出力感覚は70%〜90%の幅の中にあります。人類最速を競う100mスプリンターの選手達がスタート前にどのような仕草をしているか思い出してみてください。腕や脚をブラブラ揺すったりしてうまく力を抜こうとしています。それは彼らが『力みはスピードの敵』だということを誰よりもよく知っているからです。自分が出せる100%のスピードと全力疾走はイコールではないのです。まずは、自分がどの位の感覚で走れば、身体がスムースに速く動かせるのかを探ってください。


次に、以下の4つは、スピードを落としてしまうよくあるフォームです。

1.前に進みたい気持ちが強すぎて前傾姿勢が強くなってしまう。

   このフォームだと、膝が前に出せず、ストライド(足幅)が狭くなってしまいます。また、足も後ろに流れて脚の折りたたみも遅れてしまうため、素早く次の一歩に進めず、ピッチ(足の回転)が遅くなってしまいます。

2.姿勢良く走ろうと胸を張りすぎて重心より前に足を着いてしまう。

   重心より前に足を着いてしまうと、受け取る地面反力は進みたい方向と逆に働き、ブレーキをかけてしまっていることになります。

3.地面を押して力をもらう意識ではなく、蹴って進もうとしている。

   蹴ろうという意識があると、接地した後に足首を伸ばそうとする時間が生まれ、これがロスタイムになってしまいます。更に蹴ることによって、脚が後ろに流れやすくなってしまいます。脚が後ろに流れてしまうとピッチが遅くなってしまうのは前述した通りです。

4.腕の振りが斜めになり、体幹部が揺れてしまい、腕の振りのスピードを落としてしまう。更に、肘が伸びたり、曲げ伸ばしの動作が入ると、もっとスピードを落としてしまう。

  肘を伸ばして斜めに腕を振る→肘を曲げてみる→まっすぐに腕を振ってみる、という動きを順番にやってみてください。どんどん腕の振りのスピードが速くなるのがわかると思います。


トップスプリンターの走りは、行進の延長線上のようにまっすぐに腕を振っているため、体幹部がブレず、素早く腕を振ることが出来ています。そして、膝を上げて出来るだけ遠くに接地し、ブレーキがかからないように進めた脚に重心を乗せ、接地で地面を押して地面反力をもらったら素早く足を引き付けて次の一歩に繋げています。


自分の走りをビデオに撮って見てみたり、他の人に見てもらったりして、自分の走りの『どの部分がスピードを落としているのか』を明確にしてみてください。そしてそれがはっきりしたら改善していけば良いのです。どの動きがスピードを落としているのかがわからないと改善することは出来ませんが、今回は見るべきポイントを示してみたので、是非自分の走りと照らし合わせてみてください。スピードを落としている原因を改善していければ、必ずスピードは上がりますよ!