■育成のジェフ、復活なるか。江尻イズムをチームに注入
過去に阿部勇樹(浦和)や佐藤寿人(広島)、佐藤勇人(千葉)といった日本代表選手を輩出してきたジェフユナイテッド千葉U-18。近年は県リーグ1部に在籍し、目立った成績を残せていなかった。しかし、昨年度はクラブユース選手権でベスト4に進出。プリンスリーグ関東への復帰こそ叶わなかったが、『育成のジェフ』復活の予感を漂わせた。
その復権を加速させるべく挑んだ今季。県リーグでこそ好調を維持していたが、クラブユース選手権は関東予選敗退の屈辱を味わった。ただ、昨年度から指揮を執る江尻篤彦監督は、「(クラブユース選手権関東予選・敗者復活戦の)川崎F戦でもわれわれが守ってカウンターから点取るという戦いではなく、ある意味互角以上の戦いからのPK負けだった」とチーム状況に手応えを感じている。その理由は「ボールを動かすこととかではなく、サッカーの本質を突き詰めている。何のためにサッカーをやっているのか。何のために守備をしているのか」という、サッカーの原理原則を選手たちが理解しつつあるから。まだまだ物足りない部分はあるが、「自分たちからボールを奪いにいって、ゴールに結び付ける」という江尻イズムはチーム内に根付き始めている。
そして、今年からより一層力を入れている部分が人間教育の部分だ。「サッカーだけではなく、人の目を見て話せるとか、受け答えがしっかりできるとか、考えを伝えられるとか。それを持たせてあげないとどの世界でも通用しない」という江尻監督の考えの下、チームは6月初旬から練習場付近のゴミ拾いなどを行う奉仕活動をスタートさせた。最初は受動的に取り組む選手は多かったが、クラブユース予選敗退後からのうどう主体的に取り組む選手が増加。少しずつ意識の変化は現れており、「最近の練習では声をかけるようになったし、今までにはなかったような言葉も出てくるようになった。練習の質も上がってきていると思います」と主将の菊池俊吾もチームの成長を語っている。
クラブユース選手権出場を逃したため、残された目標はJユースカップと県リーグ1部を制してのプリンスリーグ関東昇格のみ。ただ、人として成長することができなければ、結果を残せたとしても意味はない。夏の雪辱を晴らすべく、千葉U-18は心技体を極めて更なるステップアップを目指す。
DF菊池俊吾(3年)
主将としてチームを取りまとめる大黒柱は、「守備的な能力やクレバーにプレーが出来る」部分が最大の武器。また、守備的なポジションであればどこでもこなせるという万能性も魅力で、本職はCBだがボランチとSBを高いレベルでこなすことができる。目標とするのは元ドイツ代表のラーム(バイエルン)。
「(クラブユース選手権関東予選に)僕はけがをしていて、試合に出ることができなかった。でも、キャプテンとしてできることをやって、最後は副キャプテンの(武藤)慎平とオザ(小澤裕太)にチームを預けました。一歩及ばなかったのは、チーム全体の能力や私生活の部分でも問題が出ていたからだと感じます。それは監督にも言われて、『そこが出てきたよな』と監督からも言われたので、もう1回そこから見直してサッカーと真摯に向き合うことをやっていきたい。(自分のストロングポイントは)色んなポジションができるのですが、守備的な能力やクレバーにプレーができるところで、チームに必要なプレーができるのが強みだと思います。大した特長はないですけど、なぜかあいつはいつも試合に出ているなという特徴は意外に大事だなと。最近はCBをやることが多いのですが、無理して飛び込まないとか、状況判断して行くところは行く。そこの判断能力は長けているのかなと感じています」
MF中村駿太郎(3年)
ドリブル突破と強気なハートが魅力のトリックスター。昨夏からは筋力トレーニングを増やし、今ではパワーも兼備するアタッカーへと変貌を遂げた。目標とするチリ代表のA・サンチェス(アーセナル)やベルギー代表のアザール(チェルシー)のように、試合を決められる選手になることを誓う。
「レイソル戦で負けた試合では自分の出来も悪かったのですが、1失点ごチーム全体として押し込めるようになっていたので、その時に決めきれないところが出来た。逆にレイソルはその時間で守って、決め切るところで決めて3点目まで奪った。そこはプレミアリーグと県リーグの違いがあるのかなと。川崎F戦ではグラウンドが悪い中でも相手を押し込みながら、決めきれずPKで負けてしまった。去年はそう言う時に大塚(一輝)君とか氣田(亮真)君が決めて、引っ張っていってくれていた。自分とか3年生がチームを引っ張ってあげられなかった」
FW小澤裕太(3年)
屈強なフィジカルを生かしたパワフルな突破と、空中戦のちぶ粗青器のストライカー。クラブユース選手権関東予選では負傷もあって、結果を残すことは出来なかった。それだけに夏以降の大会に掛ける想いは人一倍強い。憧れるイングランド代表のハリー・ケイン(トットナム)のように、ゴールを量産することができるか。
「ストロングポイントは身体能力の高さです。身体を張ることや、前線での献身的なプレー。そして得点を取るプレーができると思います。今はチームとして前線からの守備を要求されているので、そこにも取り組んでいきます。逆に課題はボールを収めるところだと思っています」
MF深川大輔(2年)
「サイドチェンジパスやロングキックが得意」という期待の2年生ボランチ。中学3年までCBが本職だっただけに守備能力も高く、潰し役としての役割も担うことが出来る。2月にはトップの宮崎キャンプにも帯同するなど、クラブからの期待も大きい。憧れの選手は元スペイン代表のシャビ・アロンソ(バイエルン)。
「クラブユース選手権関東予選は)試合の内容が良かっただけに、最後に自分がPKを外したことが悔しい。ずっと攻めていたときに1点が取れなかったのは、今までの自分たちの甘さだったし、ツケが回ってきたのかなと思います。その時はチーム内で厳しいことを言い合える雰囲気が出来ていなくて、下の学年が上に要求することもなかった。でも、それができるようになれば変わってくるのかなと思います」
DF堀博昭(1年)
豊富な運動量と対人能力の高さでレギュラーを獲得した期待のルーキー。基礎技術の向上が現在の課題だが、パス&コントロール練習で徐々に改善の兆しが見られる。世代別日本代表への憧れも強く、「全国大会で活躍して日本代表への道も常に意識している」とのこと。常に100%のプレーを出し切る男の成長に今後も目が離せない。
「今年の4月に新チームが始動したのですが、昨季までは自分が(U-15に居たので)キャプテンとして主体的に動いてゲームをコントロールすることが多かった。でも、進級したのでまた下の学年からのスタート。そこで、チャンスをどんどんつかんでスタメンまで上り詰めることができました。なので、そこから落ちたくないという気持ちが強くて、常に100%プレーができるように準備をしています。ひとつでも気を抜いたプレーをしてしまうと、成長しないし、スタメンに食い込めない。なので、100%のプレーを心掛けています」
取材・記事/エル・ゴラッソ千葉担当 松尾祐希
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