堅実にビルドアップ。宮城の地で成長を続ける仙台ユース
ベガルタ仙台のアカデミーは、東北という地に根ざすJクラブとして、トップチームを目指す人材を育てている。
アカデミーの各カテゴリーが練習する泉パークタウンサッカー場とクラブハウスは、トップチームのクラブハウスからは少し離れたところにある。しかし長い時間をかけて環境を整備する途上で、物理的心理的距離を縮める努力がなされている。たとえば、今季は強化担当コーチを新設して、アカデミーとトップを行き来したり昇格したりする選手の動きを円滑化した。ほかにも、医療面をはじめとするさまざまな情報を共有する試みを進めている。
2016シーズンを戦う仙台のトップチームには、奥埜博亮(※仙台ユース卒業後、提携する仙台大学を経てプロ入り)、茂木駿佑、佐々木匠、小島雅也という4人のアカデミー出身者が在籍している。彼らのような人材を育てながら、仙台のアカデミー自体も成長を続けている。小島雅也はリオ五輪日本代表のトレーニングパートナーに選ばれた。
現在の仙台ユースを率いる監督は、越後和男氏。ブランメル仙台時代からベガルタ仙台への過渡期に選手として活躍し、引退後はトップチームのコーチも務めた経験も持つ。仙台の歴史の多くの時間をともにしてきた越後監督だからこそ、このクラブに必要とされる人材やヴィジョンが見えている。その眼差しは、ときに厳しくも、温かい。
「攻撃のときはボールをしっかり後ろからビルドアップして、サイドからも中央からも攻めるチーム。守備は、奪われたその瞬間から取り返すことを基本とする」としてチームの骨格を作り、今年も「特に(高円宮杯U-18サッカーリーグ2016)プリンスリーグ東北ではビルドアップについては口うるさく言っていますね」という方針だ。その一方で、今季の仙台ユースについては「粘り強く守れる選手、攻撃に切り替わったときに素早く出ていける選手が多いので、彼らを生かして戦術に幅を加えることもしています」というアレンジを加える。
昨季の仙台ユースは、日本クラブユースサッカー選手権U-18大会で史上初のベスト4進出を果たした。「選手たちはその成績を越えることをモチベーションとしていますし、私自身もそのつもりです」と越後監督は今年の第40回大会を展望する。そしてその先、仙台アカデミーの将来像について聞かれると、指揮官はさらに表情を引き締めた。
「ゆくゆくは、アカデミー出身者で仙台トップチームの先発11人を編成できるくらい人材を育てたい。すぐユースからトップに昇格できなくても、大学を経てここに上がってくれれば。その中で日本代表選手が生まれれば、なおうれしいですね。そして、競技を離れたとしても、ここでつかんだことを生かして社会に貢献してほしい」。その理想のもと、仙台ユースの選手たちも、仙台のアカデミーも、この東北・宮城の地で、育ち続ける。
■注目選手紹介
齋藤 耀之介(さいとう・ようのすけ/3年)
仙台ジュニアユース出身。FWと攻撃的MFでプレーする。ボールを受けて素早く前を向き、チームに推進力を与えることができる。キープ力にも優れ、「体の強さとうまさを生かしたキープ力を持っている」という共通項のもと、大宮アルディージャの家長昭博選手のプレーなどを研究し、自らの武器をさらに磨いている。
「(日本クラブユースサッカー選手権U-18大会では)去年に悔しさを知ったので、今年は絶対に日本一を取りたい。個人としては、試合の中で誰よりも決定機で目立てるプレーをしたいですね。自分が点を取るだけでなく、仲間のためにチャンスメークもして、みんなの得点を意識してプレーします」
佐々木 翼(ささき・つばさ/3年)
仙台ジュニアユース出身。スピードを生かした背後への飛び出しや、90分間走り続けるハードワークを武器とする。11番を背負う者として、サンフレッチェ広島の佐藤寿人のような飛び出しを理想にしているという。2年時の昨年に出番を増やした反面、「出してもらっていた試合で、得点に貢献できなかった」と反省。今季はさらにゴールを意識する。
「(日本クラブユースサッカー選手権U-18大会では)去年から、日本一を目標としていました。でも準決勝で負けて、あと二勝というところで日本一を逃したので、このチームでその"あと二勝"を達成し、日本一を達成したい。個人としては、今年は去年よりも、チームに得点というかたちで貢献したいと思っています」
上田 健斗(うえだ・けんと/3年)
FC古河ジュニアユース出身。身長185cmのセンターバックで、高さを生かした空中戦や、堅実な一対一での守備が光る。キャプテンとしての統率力も高い。仙台トップチームの渡部博文選手を目標としており、「チームを統率する声や、球際のところでしっかり戦ってチーム全体に闘争心を与えること」を自身も身につけたいという。
「(日本クラブユースサッカー選手権U-18大会では)去年の先輩達がベスト4という成績を残してくれました。自分達は、そこを越えなければいけないと思っています。今年はキャプテンとしてこの大会にのぞむので、チーム全体をいい雰囲気にまとめ上げ、厳しい戦いでもみんなを引っ張りたい」
取材・記事/エル・ゴラッソ仙台担当 板垣晴朗
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