2016年、海外で高い評価を受けている日本人FWが二人いる。それが、イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに所属する岡崎慎司選手と、ドイツ・ブンデスリーガ、マインツに所属する武藤嘉紀選手だ。
なぜ、彼らはヨーロッパのトップリーグでスタメンの座を勝ち取ることができたのか。その理由のひとつに「守備力」が挙げられる。岡崎、武藤ともにFWであり、求められるべきはゴールである。しかし現代サッカーにおいて、ゴールにつながるプレーだけに集中できるのは、メッシやネイマールなど、ごく少数のクラッキ(名手)だけ。サッカーはチームプレーである以上、攻撃と守備、両面での貢献が求められることは言うまでもない。
岡崎はレスターのラニエリ監督が掲げる「ハードワーク」ができるFWとして、指揮官の信頼も厚い。前線からのプレスはもちろんのこと、ときには中盤に下がって守備をし、ボールを奪ったら、すぐさまゴール前に駆け上がる。素早い攻守の切り替えが生命線のレスターにおいて、岡崎の献身性は欠かすことの出来ないものとなっている。
今季のプレミアリーグ首位決戦、アーセナル戦(2月14日)では、1点リードしたレスターに退場者が出て、右サイドバックを補強しなくてはならなくなった。1点リードしている状況で、守備の選手が退場。本来であれば、2トップのうちの1人を下げて、DFを入れるのが定石だ。しかし、ラニエリ監督はFW岡崎をピッチに残し、MFをベンチへ下げている。このことからも岡崎の「守備での貢献」が評価されていることがわかる。
マインツの新エースとして、ユヌス・マリに次ぐゴール数(7点/2月下旬時点)を決めているのが、今季からブンデスリーガに戦いの場を移した武藤嘉紀だ。左右両足でボールを扱え、ヘディングも強いという万能型FWの武藤は、攻撃だけでなく守備での貢献も著しい。試合の流れによっては、中盤に下がって相手に身体をぶつけてボールを奪ったり、スライディングタックルをするなど、守備面でのハードワークも怠らない。献身的にボールを追いかける姿で、1対1での勝利を重視するドイツ人のハートをつかんでいる。
マインツではワントップで起用されているが、日本代表では4-3-3の左ウイングとしてピッチに立つことが多い。武藤はタッチラインを使った守備もうまく、相手の右サイドバックがボールを持ったときに、サイドハーフやボランチへのパスコースを切りながら、相手にプレッシャーをかけていく。そして、持ち味であるスプリント能力を活かした素早い寄せでボールを奪う。
武藤を見ていると、ダイナミックなドリブルやシュートに目が行きがちだが、守備の判断力は高いものがある。これは岡崎も同様だ。日本を代表する2人のFWが、相手ボールの時にどう動いているのか。どのコースを切り、どの位置でプレスに行くのか。寄せるコースは、スピードは...。そのあたりを注意して見ることで、観戦力を高めるとともに、自分のプレーに活かしてみよう。