日本人に足りないと言われる「得点力」を上げるには、「撃つ」だけではなく「決める」ためのセンスと経験、メンタルが必要だ。緊張感のある場面でシュートの精度を上げるには、どんな心持ちでいるべきだろうか。
Text:Miyuki Takahashi
日々のルーティンが、平常心を生む
年明けのアジアカップ、UAE戦。終始、日本ペースであったのにも関わらず勝ち切れなかった結果を受けて「得点力のあるストライカー」を求める声が多くあがっている。「撃つ」だけではなく「決める」ことができるストライカーには、センスや経験とともにメンタルも必要だ。Spikeでもお馴染み、スポーツメンタルトレーニング指導士の高妻先生は、先の試合の中で日本代表のメンタル面が端的に現れたのは、PKの局面だという。
「PKは運の要素が大きいですが、運を引き寄せるメンタルというのもあるんです。PKはキッカーとゴールキーパーの1対1の勝負。代表戦レベルになれば、キーパーはキッカーのあらゆる情報を把握しているでしょう。最大のプレッシャーがかかる中、相手の裏をかく駆け引きが必要になるわけです。そこで最も大事なのは、いかに平常心を保てるかということ」
なるほど、平常心があれば視野も広くなるし、相手の精神状態やチームの状況を正確につかむことができる。逆に、平常心を持てない選手は邪念が多くなる。「苦手なキーパーだったよな...」「ちょっと待て、外したらヤバいぞ」「逆にそっちに出るかも...」といろいろな雑念が頭に浮かび、呼吸が乱れてしまう。気持ちがまとまらないまま雑にシュートをすれば、普段持っている能力が発揮できないことは容易に想像できる。
しかし、大舞台で平常心を持ち続けるのはカンタンなことではない。勝ちたい気持ちが強ければ強いほど、緊張にのまれたり、焦りを感じたりしてしまうものだ。いつも落ち着いてパフォーマンスを発揮するためにできることといえば、まずイメージトレーニングだ。練習や、普段の何気ない時間に、サッカーのあらゆる状況を詳細にイメージしておこう。「相手がこう来たらどうするか」に対しての答えを1つではなく、いくつか持っておくことが大切だ。
もう1つはセルフコントロール力を高める習慣づけである。
「起床時間、起きてからすること、食事の内容や練習場に入る時間、練習メニュー、寝る前にすること、就寝時間...など、ルーティーンを決めてそれを守りましょう。普通の日も、大きな大会の日も、同じルーティーンで過ごすことが平常心を生みます」
優れた選手は24時間の使い方が圧倒的に上手いという。与えられた時間はみな平等なのだ。練習できる時間だってそこまで大差はない。自分が決めたルールを、自分を律して守り続けたという実績が「やることはやった」という満足感を生み、平常心を与えてくれるのだろう。