熊本の名門・大津の総監督を務める平岡和徳氏に、休校や高校総体中止決定を受けて生徒たちにどのような声を掛けたのか。また、今後のコロナウイルスとの向き合い方などをお聞きしたぞ。

平岡 和徳
1965(昭和40)年7月27日生まれ。熊本県下益城郡松橋町松橋町(現・宇城市)出身。松橋中学校から帝京高校へ進み、選手・主将として2度の全国制覇を経験。筑波大学進学後も主将として総理大臣杯準優勝や関東大学リーグ優勝などを果たす。大学卒業後は熊本県教員となり、県立熊本商業高校に勤務したのち、1993年より県立大津高校へ赴任。サッカー部監督、総監督として全国高校総体、全国高校選手権の常連校に育て、これまで50名を超えるJリーガーを輩出。2017年4月より宇城市教育長。

Q:休校や高校総体中止決定を受けて、生徒さんたちも動揺したのではないかと思います。どのような対応、声かけをされたでしょうか?
「練習日誌を使ったコミュニケーションや、ツールを活用したフィジカル面の計測、選手たちから送られる映像のチェックなどを行いました。選手たちには『百折不撓』というテーマを与えて、『世の中がこうして動かない時でも、24時間をあらためて自分流にデザインすれば前に進めるよ』という話をしました。日常的に正しい努力を継続している子たちは、自粛期間中もいいトレーニングを維持できるし、活動を再開した後もいいパフォーマンスを発揮できると思います」

Q:しかし、先生をはじめコーチングスタッフにとっても直接対面してコミュニケーションを取れない難しさもあったのではないでしょうか。
「直接触れ合うことはできないけれど、心と心のつながりを大事にして、こういう時だからこそできることをポジティブに進めていこうと。インターハイは中止になったけれども、切り替えてプレミアリーグの再開や冬の選手権に向かって、チャレンジを整理しようということを伝えました。要は、全く焦る必要はないということ。もちろん、彼らにとって学校が休校になり、インターハイが中止になったことは、大きなストレスだと思います。でも人生はまだ長くて、ここでネガティブになって前に進まなかったり、下を向いたりする時間はもったいない。いま、世界中でこの狡猾なウイルスにチャレンジしている。サッカーができないことにネガティブになりすぎて、焦る必要はない。今できることを丁寧にやっていこうということです。そして顔を上げて、『笑顔』でいること。こういう時こそたくさんの『笑顔」で、周囲の人にエネルギーやパワーを与えなければいけない。『笑顔』というのは人の力を引き出して、物事を好転させ、奇跡を起こす力を持っていますから」

Q:選手たちや指導者はコロナウイルスとどう向き合っていくべきでしょうか?
「特効薬やワクチンができるまで、リスクをゼロにすることはできません。でも、サッカーという競技自体、リスクはゼロではないですよね? コンタクトプレーがあるし、ウイルス以外の感染症もある中、それらを乗り越えてプレーしてきました。だから、リスクを低減する環境、子どもたちが安心して、安全に、安定した中でプレーできる環境を大人たちがいかに作れるかが大切です。ただ、これから暑くなれば熱中症もあるわけですから、健康(命)を守るために、状況に応じて、自分の判断でマスクを外す方がいい場合もありますよね。何でもかんでも『言われたこと、決められたことをやりなさい』というのではなくて、自分の命を最優先にしながら、他者への思いやりも持って、自分のフィルターを通して取捨選択し、アウトプットする。そうした判断力、そして『考動力』が大切になってくると思います。つまり『起きたことの後始末』よりも、いろんなことが起きると予想、予期して、予め準備をしておく『前始末』が成功の確率を高め、子ども達の努力の推進力になると思います」

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