<質問>相手にフィジカルで勝てません。どうやったら勝てるか教えてください。

<回答>いつの頃からか日本でよく目や耳にするようになってしまった『フィジカルで負けた』『フィジカルが弱い』『フィジカルで勝てない』という言葉。しかし、フィジカルという言葉は幾つかの要素を含んでいます。

具体的には、身長や体格、筋力、スピード、持久力、身体の使い方、ステップワーク、バランス等々。フィジカルという言葉を使った時に、そのうちのどの要素を指しているのか、それは解決できる要素なのか、解決できる場合、どのような方法で行うのか、といった考え方をしていかないと課題は克服できません。

例えば、身長や体格の違いは解決できない要素であり、この要素で勝てない、負けている、と考えていても、答えは見つからないままです。しかし、身長や体格に勝る相手を抜く、相手に抜かれないようにする、コンタクトで負けないようにする、競り負けないようにするには、どうしたら良いか、と考えると改善に向けて取り組んでいくことができます。

その際に、『なぜうまくいかないのか』ということをしっかりと紐解かずに、「負けた」「勝てない」で終わってしまっては、その課題を克服していくことはできません。

例えば、速い相手に抜かれないようにするためには、素早いターンの技術を身につけ、ボールと相手の間のスペースを奪いにいけるようにトレーニングする。そうすることによって相手のスピードを抑えることができます。

大きな相手にあたり負けしてしまっている場合、コンタクトする時の姿勢はどうか、どこでコンタクトしようとしているのか。背中が丸まった状態、つまり肩甲骨が開いて骨盤が後傾してしまっている状態ではわずかな力でバランスを崩してしまいます。また、上半身からあたりに行こうとすると、その時点で自らのバランスを崩してしまいます。重心を平行移動させるようにお尻からコンタクトできれば、大きな相手に下から突き上げるように当たりにいくことができるようになります。

運動量で走り負けをしてしまったと評価した場合、試合に向けて疲労は残っていなかったのか。いつ、どこに、どのくらいのスピードで走るという判断はできていたのかどうか。そして、その運動量は自分たちのチームの戦い方として狙いとしたものだったのか。なぜなら運動量と勝敗の関係性は低く、相手チームより多く走れば勝てるわけではないからです。その分析をしないで、ただ走行距離で相手に走り負けたからといって、素走りのトレーニングをしてもなんの解決にも繋がりません。

といったように、フィジカルで勝てない、負けたと感じた状況があったとしたら、『どの要素で、なぜ勝てなかったのか、負けたのか。その課題はどのように解決していけばよいのか』ということを、しっかりと分析してください。その取り組みをしないと、いつまでも同じことが続いてしまいます。つまり、勝てないし、負け続けてしまうわけです。

そうならないように、こういった考え方で『フィジカル』と向き合っていってください。また、フィジカル的に全てを兼ね備えている選手はいません。みんな良いところと悪いところがあります。自分の良いところを最大限に伸ばして、強みのある個性的な選手になっていってください。そして、味方同士、足らない部分を補いあってください。それがチーム・スポーツの魅力の1つだと思っています!