よく聞く「チーム一丸になる」という言葉。でも一体、それはどういう状態なのか。誰も予想しえなかったほどの力を生む、チームワークの実態。過去の事例から、チームワークの重要性をしっかりと感じとってみよう。
【リバプールが起こした奇跡の大逆転】
2005年5月25日、トルコで行われたチャンピオンズリーグ決勝は、今なお語り草となっている伝説の一戦だ。ハーフタイムのロッカールームに戻ってきたリバプールの選手たちは、まさに「絶望」という言葉が相応しい様子だった。ミランを相手に、前半だけで3点ビハインド。キャプテンのスティーブン・ジェラードは頭を抱えたまま椅子に腰掛け、「もうダメだ」と考えていた。
しかし、リバプールのラファエル・ベニテス監督は冷静だった。心の中は乱れていたかもしれない。だが、少なくとも選手たちの目には「いつもと同じような」様子に見えたという。そうしてまずは選手たちを落ち着かせ、それからボードにいくつかのポジション変更を書き、相手ボランチのアンドレア・ピルロにゲームメークをさせないために2列目の位置で数的優位を作ること、選手交代によってミランの中心である攻撃的MFカカにマークを付けることを説明した。そして最後に、ふたつの言葉で選手たちを送り出した。
「顔を上げろ。早い時間に得点できれば、必ず試合は変えられる」
「素晴らしいファンの前で、これ以上のゴールを失うことは絶対に許されない」
この日ばかりはキャプテンや副キャプテンのゲキは必要なかった。全選手がまったく同じ強い意志を持ち、それぞれ逆襲に向けて奮い立っていたからだ。そして後半のピッチに戻ってきたリバプールは素晴らしい一体感を披露する。54分にヘディングで1点を返したジェラードが、「もっと盛り上がれ!」とばかりに両手を上げてサポーターをあおる。ベニテス監督は、このキャプテンがすべてのメンバーと、スタジアムに集まったすべてのファンをひとつにしたと振り返る。
「ときに物事はダイナミックに変化することがある。スティーブンのゴールがまさにそれだった。点を決めた後に彼がしたリアクションで全員が奮い立ったんだ。実際、あの後は運動量も上がったし、ファンもよりエネルギーをくれたと思う」
その後のリバプールは強かった。一気に2点を追加して同点に追いつくと、その後は延長戦が終わる120分まで、全員が献身的にゴールを守り抜き、ミランの反撃をゼロに抑えた。終盤はジェラードが右サイドバックの位置まで下がって相手にタックルを仕掛け、守備の要ジェイミー・キャラガーは足を痙攣させながら戦い抜く。そして、リバプールはPK戦を制し、奇跡の大逆転優勝を果たした。リバプールが試合をひっくり返すことが出来たのは、まさにチームワークの賜物だ。"冷静"と"情熱"の両方を教え子たちに示した監督、そしてプレーで仲間たちに模範を示したキャプテン。リーダーたちの言動を起爆剤に、一丸となった選手たちが試合を一変させたのである
【フリーマガジンSpike!より転載】


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