2015-16シーズンの欧州トップシーンにおいて、猛威を奮っているシステムがある。それが4-4-2だ。今季の欧州チャンピオンズリーグで王者・FCバルセロナを倒し、ベスト4に進出したアトレティコ・マドリー(スペイン)は統制のとれた4-4-2を採用。準々決勝でバイエルンを苦しめたベンフィカ(ポルトガル)は4-2-3-1と4-4-2の併用で強固な守備ブロックを形成し、メガクラブを苦しめた。

4-4-2を使うアトレティコやベンフィカに共通することがある。それは、「守備を固めて、カウンターアタック」という作戦で強敵に挑んだこと。FCバルセロナを撃破したアトレティコはバルセロナの猛攻に耐え、少ないチャンスを確実にゴールに結びつけ、前回チャンピオンを葬り去った。

ベンフィカは「ペップ・バイエルン」の緻密なパスサッカーに対して、最終ラインと中盤、前線が連動した守備を敢行。敗れはしたが、称賛に値する戦いを見せた。サッカーはたとえ選手のポテンシャルで劣るチームであっても、戦い方次第で優位に立つことができる。そのためのひとつの武器が4-4-2なのだ。

では、なぜ4-4-2が格上と戦うときに威力を発揮するのか。それは「バランスのとれた選手の配置」にある。中盤の選手をフラット(横並び)にした状態で、MF4人、DF4人が並ぶと、ピッチに隙間なく選手が立つことができる。これがポイントなのだ。たとえば、中盤をひし形にした4-4-2やFCバルセロナのような中盤が逆三角形型の4-3-3、ハリルジャパンのようなトップ下とダブルボランチを置く場合、ピッチ上に選手同士でトライアングルを作りやすいため、スペースでパスを受けやすいという利点はあるが、裏を返せば、ボールを奪われた時に、相手に使われるスペースを与えてしまうことになる。

一方で中盤がフラット(横並び)の4-4-2は、ピッチにバランスよく選手を配置することができるので、相手チームの選手が入り込むスペースを消すことができる。さらに最終ラインを高く保ち、前線から最終ラインまでの距離をコンパクトにすることで、スモールフィールドでの戦いに持ち込み、プレーの自由を奪うことが可能だ。

このときに注意したいのが、最終ラインをズルズルと下げないこと。そうなると中盤エリアが間延びし、スペースを与えるとともに、相手チームの選手が自陣に入ってきてサンドバッグ状態になってしまうので気をつけたい。

中盤がフラット(横並び)の4-4-2は、攻撃に転じた際はピッチにバランス良く選手が立っているため、相手チームの守備のギャップを突きづらい。パスを回すのには不向きなシステムと言えるが、相手チームが格上の場合、そもそも中盤でパスをつなぐとプレスの餌食になるので、おすすめできない。また、カウンターアタックは少ない手数で、一直線にゴールへ迫るのが常套手段。そのため、自陣でパスを繋ぐスペースが限られていても問題はないのだ。

このように、チームのスタイルや選手の特徴、対戦相手との力関係によって、システムの向き、不向きがある。テレビで試合を見るときは、どのようなシステムで、どんな戦い方をするのかに注目するのもおもしろいだろう。テレビを見ながらイメトレし、「サッカーIQ」を高めて、プレーに活かしてみよう。