現在、日本最速との呼び声も高いスピードキング、伊東純也選手。そのスピードはどのように磨かれ、試合で威力を発揮するようになったのか。圧倒的なスピードを身につけるヒントを、伊東選手のインタビューから探っていこう。
■トップスピードの状態を、試合でどれだけ多く作り出せるか。
神奈川大学時代から頭角を表し、42試合で27ゴールを挙げるなど、目覚ましい活躍を見せた伊東選手。プロ加入後もそのスピードを存分に生かし、今では圧倒的な突破力で柏レイソルの中心選手として活躍する。近い将来、日本代表の秘密兵器として期待される伊東選手に、まずは高校時代、どんな意識で練習に取り組んでいたかを聞いた。
「足が速いことは自覚していたんですが、ただ速いだけでなく、そのスピードをドリブルでどう生かすか、スピードに乗った状態でどれだけいいパスを出せるかは、意識をしていました。また、速いといっても一回や二回の局面だけでは意味がありませんから、試合中は、トップスピードになった状態をできるだけ多く作り出すかも意識していましたね。自分は瞬発力だけでなく、持久力もあると思っているのトップスピードの状態を試合でどれだけ多く作り出せるかで、その点がストロングポイントだというのは今も変わりません」
持久力も強味だというが、フィジカル面ではどんな強化を意識しているのだろうか。
「筋肉をつけすぎるとスピードが落ちるという人もいますが、自分は筋トレが好きなのでガンガンやっています。筋肉がつきにくいタイプなので、筋力強化については他の選手よりも強く意識しているかもしれません。あとは睡眠ですかね。自分はよく寝るタイプで、一日9時間は寝ています(笑)。そのせいか疲労はすぐ回復しますし、怪我も少ないんです。スピード系の選手にはハムストリングの怪我がつきものですが、自分は深刻な怪我を経験したことがありません。疲れている時は思いきり休む、というのもいい結果を生んでいる要因かもしれませんね。無理するのはやっぱりよくないと思います」
■スピード勝負のカギはスタートするタイミング
今ではJ1でも1,2を争うスピードスターとして認知される伊東選手。そのスピードを生かすため、どんな工夫をしているのだろう。
「チームとして僕のスピードを活かそうという戦術があるので、攻撃の時、自分のスタートを周囲の選手に見せやすくする、という意識はあります。味方が自分のことを見たなと思ったらすぐスタートするとか、ボールが遠い場所にあってもこちらに呼び込むようなスタートを切る。つまり、スピードを活かすには、スタートのタイミングが大切だと思っています。また、スペースがあれば早めに相手の後ろにボールを出して、自分が先にトップスピードに乗れるよう工夫はしていますね。あとは、試合の終盤にどれだけ走れるか。相手が疲れてきて全体のスピードが遅くなった時は逆にチャンスなので、そういう場面で頑張って走ること。その時、必要なのはやっぱり強い気持ちですよね。また、守備の時もただ走るのではなく、パスやランニングのコースを切って、同時に自分の体は疲労を回復させる。結局、いつスピードを使うかをいつも考えているということになりますね」
自分の持ち味をしっかりと認識し、その使い所をいつも考えているという伊東選手。今、チームから求められているのはどれだけのスピードかを常に考えることが、「速さ」を武器にする近道なのかもしれない。
Junya Ito-伊東純也
1993年3月神奈川県生まれ。鴨居SC、横須賀シーガルズ、逗葉高、神奈川大を経て、2015年にプロ加入。ヴァンフォーレ甲府所属時、初スタメンで挑んだ鹿島戦でいきなりプロ初得点をマーク。デビューイヤーから30試合出場、4得点で、快足FWとして注目の存在に。今年1月には柏レイソルに移籍。右サイドハーフ、右サイドバックとして能力を発揮。好調のチームを牽引する。