第97回全国高校サッカー選手権大会
準々決勝 流通経済大柏 1-0 秋田商

19年1月5日(土)12:05キックオフ/千葉県・フクダ電子アリーナ
観客8,425人/試合時間80分

■得点者
(流通経済大柏)
八木 滉史(前半6分)

■ゲームのあらすじ
選手権出場回数最多の44回を誇る伝統校・秋田商と、2007年度の選手権王者であり、昨年度の準優勝校・流通経済大柏の一戦はいきなり動いた。前半6分、MF⑩熊澤和希の右からのロングスローを、ニアサイドでFW⑨岡本竜がヘッドでつなぎ、最後はMF⑱八木滉史が蹴り込んで、流通経済大柏が先制に成功する。この1点を鹿島内定のCB⑤関川郁万、秋田商のエース⑦FW長谷川悠にマンマークについたCB㉘横田大樹を軸にした守備陣が守り切り、1-0で流通経済大柏が勝利。2年連続の準決勝に駒を進めた。

■ピックアップコラム
名将がこだわる「1-0の美学」
流通経済大柏が狙いどおりの守備で相手の長所をシャットアウト!

「監督からは『1−0で勝つのが良い』と言われていたので、まずは失点をしないことを考えました」。ボランチ・⑱八木滉史がこう語ったように、今大会の流通経済大柏は相手のストロングポイントを消し、失点をしないサッカーを徹底している。秋田商との準々決勝ではまさにそれが色濃く出た。

「秋田商のキーマンは⑦長谷川(悠)くんと⑨鈴木宝くん。この2人をどう封じるかを考えた。普通なら③須永(竜生)がCBを使うのですが、今日は小さいのですが、すごく粘り強い守備ができる㉘横田(大樹)に『(⑦長谷川の)マンマークで行ってみろ!』と送り出しました。あと⑨鈴木宝くんの能力がかなり高いなと思っていたので、そこに④西尾(颯大)を当てる形を取りました」

こう本田裕一郎監督が語ったように、流通経済大柏は普段はサイドバックで起用している㉘横田を⑨長谷川に当て、右サイドハーフの⑨鈴木(宝)に対して、本来はCBでの起用が多い④西尾を左サイドバックに起用して、それぞれマッチアップをさせた。

前半はその狙いが的中し、秋田商の攻撃のキーマンを封じ込んで、シュート1本に抑え込んだ。後半こそ豊富な運動量とスプリント力を駆使され、彼らに前を向かれるシーンが増えたが、㉘横田と④西尾は必死で食らいついて、決定的な仕事をさせなかった。④西尾は後半23分に交代したが、㉘横田はフル出場。⑦長谷川と⑨鈴木(宝)に、後半は1本ずつしかシュートを打たせず、1−0の完封勝利だ。

「彼らに良く仕事をさせないで戦ってくれた。特に㉘横田は足が速いのでサイドバックなのですが、ときどき練習でCBをやらせてみると、『小さいわりにうまいな』と感じることが多かった。練習で経験済みなので、自信を持って送り込めたし、彼自身も困惑することなくプレーをしてくれた」(本田監督)

指揮官の目論見どおりの勝利。これで今大会、初戦の徳島市立戦で1失点した以外は、星稜に1-0、秋田商に1-0と堅守で勝ち上がっている。前回大会も決勝まで無失点だったが、決勝で喫した大会唯一の失点が、準優勝という結果につながってしまった。

「1点の重みは良くわかっています。無失点で抑える。これにこだわって最後まで戦い抜きたい」

昨年の悔しさを知るCB⑤関川郁万が語ったように、この先も相手を分析し、キーマンを抑える守備で、11年ぶりの選手権制覇をつかみとるべく、流通経済大柏は一瞬のスキも見せるつもりはない。

取材・文:安藤 隆人(サッカージャーナリスト)
写真:高橋 学

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