第97回全国高校サッカー選手権大会
19年1月5日(土)14:10キックオフ/神奈川県・等々力陸上競技場
観客13,749 人/試合時間80分
尚志 1(1−0、0−0)0 帝京長岡
■得点者
(尚志)
⑨染野 唯月(前半22分)
■ゲームのあらすじ
大会屈指の技巧派集団である帝京長岡をもってしても、これまで強豪校から勝利を奪ってベスト8まで駒を進めてきた尚志の"壁"を崩すことができなかった。前半の早い時間帯にリズムをつかんだ尚志は22分、3回戦で決勝点を決めた⑨染野唯月が⑦二瓶由嵩のインターセプトからのスルーパスに反応し、左隅へシュートを沈める。しかし、その後は帝京長岡の緻密なパスワークを受ける展開に。特に後半は自陣に貼り付けられる時間帯が多く、あわやの場面が幾度もあった。しかし3ボランチにして中央を締め応対し、最後の最後もしっかり寄せ切ることでピンチを回避。80分間を守り切り、見事7年ぶりのベスト4を決めた。
■ピックアップコラム
"ウノゼロ"の立役者、尚志の中心・坂下健将
「サッカー選手として臨む最後の大会」で最高の結果をつかみにいく
尚志とって後半は文字どおりの防戦一方であった。帝京長岡は⑩小池晴輝と⑪晴山岬の2トップがボックス内で常に相手の逆を取る動きを見せつつ、受けたボールはしっかり収め、それに連動する味方も高い足元の技術とコンビネーションでゴール前に迫っていく。跳ね返されてもセカンドボールをしっかり拾って再び組み立てる。ボックス内で人数をかけて幾度もゴールを脅かした。
しかし、勝者となったのは22分に2年生エースである⑨染野唯月が決めた虎の子の1点を守りきった尚志。東福岡、前橋育英と優勝候補を打ち破ってきた粘り強さをこの試合も発揮し、決勝の切符をかけて青森山田と戦うことになる。
この"ワンサイドゲーム"の中で際立っていたのがボランチの⑥坂下健将だ。初戦から攻守に渡って絶妙なポジショニングから"気の利く"プレーを連発し、ボールを持てば攻撃のスイッチとなる。東福岡と対峙した2回戦では見事ゴールも決めた。どちらかというと攻撃で良さを出せるタイプであるが、この日は守備に奮闘した。中央でボールホルダーに寄せたかと思えば、CBが釣り出されたスペースをしっかりとカバー。サイドを進入されてあげられたマイナスのクロスをニアでかき出したシーンは何本あっただろうか。かなり体力的なキツさもあったと思うが、それでも彼の中では守れる手応えがあったと言う。
「シュートは打たれましたけど、ちゃんとシュートコースにも入っていたので、正直『大丈夫だな』というのはありました」
仲村浩二監督からも中心選手と名指しで言われている⑥坂下だが、大学進学後はサッカーは趣味程度に留めるとのことで、「上でやることは考えていない」と言う。
「自分にとってこの大会がサッカー選手として臨む最後の大会なので、楽しんで終わりたい」
これだけの良い選手が高いレベルの舞台で見られなくなるのは非常にもったいないと感じるが、彼が選ぶ人生に口出しはできない。もちろん本人としても、"有終の美"を飾ろうという思いは、誰よりも強い。
取材・文:竹中 玲央奈
写真:佐藤 博之
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