第97回全国高校サッカー選手権大会
2019年1月12日(土)12:05キックオフ/埼玉県・埼玉スタジアム2002
観客18,924人/試合時間90分+PK戦
青森山田 3(1-0、2-3、PK4−2)3 尚志
■得点者
(青森山田)
檀崎竜孔(後半11分)
三國ケネディエブス(後半18分)
小松慧(後半42分)
(尚志)
染野唯月(前半26分)
染野唯月(後半23分)
染野唯月(後半30分)
■ゲームのあらすじ
東北勢対決は激しい点の取り合いになった。前半26分に尚志はFW⑨染野唯月が右FKを押し込んで先制。後半、青森山田も反撃し、11分にMF⑩檀崎竜孔がPKを決めると、18分に左CKをDF⑤三國ケネディ エブスがヘッドで合わせ、逆転に成功。しかし、ここから尚志も逆襲を見せ、23分、30分と立て続けに⑨染野が鮮やかなゴールを決めて、試合をひっくり返した。しかし、青森山田は42分に途中出場のFW⑬小松慧が同点ゴールを決め、勝負はPK戦に。後攻の尚志4人目・DF④フォファナ マリックのキックをGK①飯田雅浩が止めると、青森山田5人目・DF⑰藤原優大が決めて、勝負あり。青森山田が決勝進出を決めた。
■ピックアップコラム
「本当に難しかった」青森山田の攻守の要が尚志の攻撃を冷静に分析
3-3という壮絶な打ち合いをまとめるなら、青森山田のボランチ⑥天笠泰輝の言葉を聞けば、この試合の状況をすべて把握できる。
「最初、相手の11番(加瀬直輝)がFWに来たのはびっくりしたけど、彼の特徴は分かっていたし、ターンして前を向いて9番(染野唯月)との関わりだと思ったので、まずは前を向かせないことを考えた」
尚志はこれまで不動のトップ下だった⑦二瓶由嵩をベンチに置き、右サイドハーフだった⑪加瀬をトップ下に起用。右サイドハーフに⑭高橋海大、左サイドハーフに⑩伊藤綾汰を起用してきた。最初は冷静に対応できた青森山田だったが、すぐに尚志は⑪加瀬を右サイドハーフ、⑭高橋を左サイドハーフ、そして⑩伊藤をトップ下に移し替えたことで、青森山田の守備陣は混乱に陥った。
「サイドをより警戒するようになって、僕は中央を(ボランチコンビを組む)⑮澤田(貴史)に任せて、サイドハーフとサイドバックの関係でボールを取ることを意識した。そうしたら、今度は(1トップの)⑨染野唯月への対応が難しくなった」(⑥天笠)
いちばん警戒すべき尚志のエース⑨染野へのマークがずれ、徐々に劣勢に立たされた。前半26分にセットプレーで⑨染野に先制を許すと、その後一度は逆転に成功するが、後半23分に右サイドを⑪加瀬に破られ、折り返しを受けた⑨染野に3人がかりでつぶしに行くが、切り返し1つで交わされ、同点弾を浴びた。
そして、同30分には⑥天笠の裏のスペースを⑩伊藤に突かれ、伊藤のドリブルから右の⑪加瀬にボールが行った瞬間、後方から飛び出してきた⑨染野を誰もマークしていなかった。全員がボールウオッチャーになり、⑪加瀬にダイレクトでスルーパスを通されると、CBとサイドバックの間にできた広大なスペースに顔を出した⑨染野にダイレクトでたたき込まれた。
「リードをしたのに⑨染野に意識が行きすぎて、10番(伊藤)と11番(加瀬)の関わりのところでついていけなくなっていた。僕らダブルボランチのところにその2人が入ってきたことで、ボランチで⑨染野を含めた3人を見ないといけない状態になって、少しばたついてしまった。そこで3人に意識をやると、今度は相手のボランチの6番(坂下健将)が絡んでくる。彼らに常に嫌なポジションに立たれて、本当に難しかった」
それでもCB⑤三國ケネディ エブスを最前線に上げてパワープレーを仕掛けると、後半42分に⑤三國のヘッドから途中出場のFW⑬小松慧が執念の同点弾。PK戦の末になんとか勝利をつかみとった。
「今日はプレスバックも甘かった。もっと守備をしないといけない。3失点食らうとは思っていなかった。ダメージがでかいので、立て直していかないと結果につながらないと思う」
試合後、⑥天笠はこう自分たちを戒めたが、「正直、僕はすでにイエロー1枚もらっていたので、今日の試合はあまり強く行けない部分もありました。決勝は激しく行けるので、それを発揮したい」と、前を向いた。
警告を恐れたが故に、確かに今日の彼のプレーは何処か縮こまっていた。だが、試合直後にここまで戦況を分析できているということは、それだけ彼のフットボールインテリジェンスの高さを示しており、かつチームの攻守の要になっている所以でもあった。
流通経済大柏との決勝戦後、⑥天笠はどう試合を振り返るのか。決勝に向けての楽しみが1つ増えた。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
写真:木鋪虎雄
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