トレーニングをし過ぎると、身長が伸びなくなる!? 育ち盛りの中高生にとって、身長がどれだけ伸びるかは、切実な問題だろう。そこで、ぜひとも知っておいてほしいことがある。それはトレーニング量と成長の関係だ。かつてオランダ代表やFCバルセロナ、マンチェスター・シティなど、錚々たるクラブでコンディショニングを担当した、レイモンド・フェルハイエン氏の調査で、驚くべきデータが明らかになったのだ。
端的に言うと、10代の選手たちの身体データを摂った結果、シーズン中は身長の伸びがわずかで、シーズンオフになると劇的に身長が伸びることが証明されている。理由として考えられるのが、シーズン中はトレーニングでたくさんのエネルギーを使い、身体が成長するために必要なエネルギーが残っていないということ。一方、シーズンオフはほとんどトレーニングをしないので、摂取した栄養が身体を成長させるエネルギーになり、結果として背が伸びたり、身体が大きくなるのだ。
そのことから考えると、トレーニングの量を適正に保ち、失われたエネルギーを補給し、睡眠をしっかり摂るというサイクルが、いかに重要かがわかるだろう。とくに高校生などは、朝練でエネルギーを使い、放課後に遅くまで練習し、夜ご飯を食べる時間も遅く、睡眠時間が足りないというサイクルに陥りがちだ。
その結果、身体が成長するためのエネルギーを十分に蓄えられず、結果としてトレーニングの効果が十分に得られないということにもなりかねない。練習で大切なのは量や時間ではなく、質である。サッカーは瞬間的に爆発的なスピード、パワーを出さなくてはいけないスポーツだ。長時間、80%程度のパワーで練習をしてしまうと、身体は80%のプレーに適応してしまう。サッカーで必要な瞬間的に100%のパワーを出す、爆発的なプレーができなくなってしまうのだ。
近年、トレーニングの量より質を求める高校は増えており、熊本の名門・大津高校では、全体練習は100分しか行わない。リオ五輪代表の植田直通や豊川雄太を育てた名将、平岡和徳監督は「終わりが見えないと、途中を頑張れない」という考えのもと、トレーニングメニューのブロックごとに終わりを決めて、そこに向かって全力を出してプレーするように仕向けている。
大津高校では午後の練習が19時前には終わる。選手たちは居残り練習はほとんどせず、家に帰って食事をとり、勉強をしたり休息に当てている。OBの巻誠一郎を始め、谷口彰悟や植田直通など、大津高校出身の選手は大柄な選手が多い。それも練習時間を100分と決め、集中して強度の高いトレーニングをし、しっかりと休む時間を確保しているからかもしれない。