中高生のサッカー選手にとって、トレーニングと同じぐらい重要なもの。それが「食事」と「休息」だ。まず理解してほしいのが、身体が成長過程にある10代の選手たちは「トレーニングで失った栄養素を、十分に補給することが大切」だということ。栄養が足りていないと、トレーニングをしても効果が出ない。あるいはトレーニングのし過ぎで、身体が成長するエネルギーが体内に残っていないということにもなりかねないのだ。

そこで今回は、韓国代表のフィジカルコーチとして、2012年のロンドン五輪、2014年のブラジルワールドカップで手腕を発揮し、現在はFC東京のフィジカルコーチとして活動中の池田誠剛氏と、サッカーコンサルタントとして、育成年代の課題を解決する傍ら、FC東京の幸野志有人選手を育てた幸野健一氏(アーセナルサッカースクール市川代表)に、中高生に向けたフィジカル向上のポイントについて教えてもらった。ぜひ参考にしてほしい。(取材・文/鈴木智之 写真/八木竜馬)

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幸野:池田さんは韓国代表のフィジカルコーチとして、2012年のロンドン五輪、2014年のブラジルW杯と、ホン・ミョンボ監督と一緒に仕事をされましたよね。ロンドン五輪では、日本に勝って銅メダルを獲得しました。日本と韓国という、アジアのトップレベルを知る池田さんに伺いたいのですが、日本と韓国の選手を比べたときに、フィジカル面でどのような違いを感じますか?

池田:選手個々によって違いはありますが、アベレージを見ると、韓国の選手の方が身体が大きく、強い印象があります。もともと、韓国の選手は食事の量が多いです。日本の食育指導は高い水準にあると思いますが、その反面、好きなものをたくさん食べさせてもらえない現状もあります。韓国は「食べたいものを食べたいだけ、食べなさい」という考え方なので、結果として食事量の違いにつながっているのかなと思います。

幸野:以前、池田さんと話をさせてもらったときは、ちょうどU-19韓国代表の遠征から帰って来たときでした。当時、池田さんが「韓国の選手は、身体を鍛えるために、何を食べればいいかを質問してくる。でも日本の選手は一切、聞いてこない」と言っていたのが印象に残っています。

池田:日本も韓国も、遠征に行くと、だいたい食事はバイキング形式です。日本の選手は「どれが美味しいですか?」と聞いて選びます。韓国の選手は「どれが身体のために良いですか?」と聞いて選ぶ。その違いは感じますね。

幸野:食事の量と質が違うんですね。私の息子(幸野志有人/FC東京)が、JFAアカデミー福島に入学したとき、中学生は1日3150キロカロリーを摂取するようにと指導されていました。最初は量を食べることができなくても、日々、意識してたくさん食べることで、胃が拡張して入るようになるんですよね。

池田:私は、食事や休息も含めてトレーニングだと思っています。韓国の選手の場合、チゲをよく食べるのですが、その中にほとんどの栄養素が入っていて、とにかくたくさん食べます。キムチの中にも、すごい数のアミノ酸が含まれていますよね。筋肉を作るためにアミノ酸は必要で、いくらトレーニングしたとしても、アミノ酸をはじめとする栄養素を摂らないと、筋肉は大きくなりません。それどころか、アミノ酸が足りないと、ケガにつながることもあります。

幸野:韓国の食文化の中で、選手達は自然と体に良いアミノ酸を摂取しているわけですね。その結果として、大きくて強い体になる。サッカーのように体を酷使するスポーツの場合、炭水化物だけでは補いきれません。筋肉などのタンパク質から分解されたアミノ酸がエネルギー源として使われるので、水分補給とアミノ酸を摂取することも欠かせない。それは知識として、知っておくべきだと思います。

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日本の選手が世界で戦う上で、フィジカルやコンディショニング面で改善すべきところは、どんなところでしょうか?

池田:まずは食事の量を増やすこと。これはエリート選手だけでなく、一般の子たちにも言えることだと思います。クラブ側としては、良い選手を獲得して育てる意識があるのであれば、食事にも目を向けないといけません。トレーニングの内容を見ると、日本と韓国はそれほど大きな違いはありません。合理的なプログラムになっていますし、一昔前の高校サッカーのように、練習を3時間、4時間するのが当たり前というチームはほとんどない。ただ、韓国のクラブでは、アカデミーの選手たちがクラブの中で食事を摂ることが、経費の中に含まれています。

幸野:食事まで含めて、トレーニングという考え方ですね。

池田:そのとおり。Jリーグのクラブも、アカデミーの選手の食事に目を向けているチームも増えてきましたが、まだ数は少ないと思います。その中で中高生にアドバイスをするならば、まずは好きなものだけでも良いので、とにかく量をたくさん食べること。そこから始めて、徐々に食事の内容にも目を向けていく。中高生にとっては、それがまず大切なことだと思います。

後編:食事、睡眠+α!コンディショニングが右肩上がりになる栄養素とは>>


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池田誠剛(いけだ・せいごう)
1960年、埼玉県生まれ。現役時代は古河電工でプレー。引退後、古河電工(ジェフ市原)のヘッドコーチ、フィジカルコーチとして活動。1997年から10年に渡り、横浜F・マリノスのフィジカルコーチを務めた。その後、釜山アイパーク(韓国)、浦和レッズアカデミー、韓国の年代別代表、韓国代表のフィジカルコーチを担当し、2012年のロンドン五輪では銅メダル獲得に貢献。2013年に岡田武史氏が指揮をとった杭州緑城のフィジカルコーチを務めた後、韓国代表のフィジカルコーチとして、2014年ブラジルワールドカップに帯同した。2015年はロアッソ熊本のコンディショニングアドバイザー、香港代表のフィジカルコーチを担当。2016年より、FC東京のフィジカルコーチに就任した。

幸野健一(こうの・けんいち)
サッカーコンサルタント/アーセナルサッカースクール市川代表
1961年、東京都生まれ。17歳でイングランドにサッカー留学後、現在まで40年に渡ってサッカーを続け、年間50試合以上プレーする。かつては広告代理店を経営し、2002年の日韓ワールドカップ招致活動など、サッカービジネスにも携わった。2013年からは、育成を中心にサッカーに関する課題を解決するサッカーコンサルタントとしても活動中。息子の幸野志有人はJFAアカデミー福島を経て、16歳でFC東京に加入したプロ選手。

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