試合中、フィフティ・フィフティのボールをどちらの選手がモノにするか。この競り合いで勝つことは、チームの勝利へ直結する。はたして、球際の競り合いで勝つためにはどうすればいいのだろう? 元日本代表FWであり、現在はヴァンフォーレ甲府でフィジカル・コンディショニングコーチを務める谷真一郎さんに、球際の競り合いで勝つためのエクササイズを教えてもらった。

<谷さんからのアドバイス>
「ルーズボールを競り合うときに、ショルダーチャージをする選手がいます。その際、お互いの肩同士がぶつかればいいのですが、少しでも当たる位置がずれると、身体が流れて入れ違いになってしまいます。そうならないためのポイントが『重心を移動させること』です。相手の肩のあたりに自分の肩を当てるのではなく、大転子(注:太ももの中軸となる大腿骨の外側にある、突起した骨)を相手の太ももの側面に当ててバランスを崩し、ボールをキープしましょう」

(1)フィフティ・フィフティのボールを競り合うときのエクササイズ

<エクササイズの方法>
1:腰に両手を当てて、大転子を移動させるように足を踏み出し、ストップする
2:踏み出した足を元に戻し、両足をそろえる

<ポイント>
足を動かす動作にとらわれず、相手とコンタクトするときのイメージを持ちながら、重心を動かして足を踏み出そう。

(2)相手より自分が後方にいる状態で、相手より先にボールに触るためのエクササイズ

<エクササイズの方法>
1: 2人1組になり、トレーニングする側が、相手より1歩後ろに立つ
2: 5mほど前にボールを置き、スタートの合図でボールを奪いに行く
3:トレーニングする側は、前方へ踏み込んで相手の前に腕を出し、ボールと相手の間に体を入れる

<ポイント>
相手に近い方の腕を、相手の前に差し込み、身体を滑り込ませる。そのとき、腕の力だけで相手を抑えようとすると、腕の裏側の筋肉だけを使うことになり、力が出ない。そのため、背中にある大きな筋肉(広背筋)を使う。

(3)腕で相手をブロックする際に必要な、広背筋のエクササイズ

<エクササイズの方法>
1:2人が1.5メートルほど離れて、向い合って立つ
2:両方の手にタオルを巻きつけ、お互いに引っ張り合う態勢を作る
3:交互にタオルを引っ張り合う

<ポイント>
タオルを引っ張るときに、背中が丸まっていると広背筋を使いづらい。必ず、背中を伸ばして、肩甲骨を背中の中央に寄せた状態でタオルを引こう。タオルを引くときは筋肉を収縮させて力を出し、相手が引くときは筋肉を伸ばしながら、力を出す。応用編としては、タオルを片手に巻きつけて引っぱり、広背筋と上腕三頭筋を鍛える方法もある。