就任36年目でついに日本一!前橋育英高校サッカー部の山田耕介監督初の著書:「前育主義」~逆境でも前進できる人を育む~ の内容を一部紹介するぞ!

前橋育英・山田耕介監督 語録(山田耕介監督の初著書「前育主義(学研プラス)」より、一部語録を抜粋)

hidari.jpg
「小嶺先生、そっちは九州方向ではなく東北です」
山田耕介監督は、小嶺忠敏監督(現長崎総科大附監督)の島原商時代の教え子だ。長崎・島原商2年生のとき、恩師の小嶺監督が運転するバスで新潟のインターハイへ。優勝を狙って乗り込んだが、早々に敗戦。試合を終えて長崎へ戻るはずが、なにやら方向が違う。小嶺監督のそばに乗っていた山田監督(島原商主将)は"異変"に気づいて助言した。

「小嶺先生、そっちは九州方向ではなく東北です」
小嶺監督は、そんな言葉を気にせずそのまま東北を目指す。インターハイの敗戦に納得のいかなかった指揮官は、そのまま東北遠征を強行。ドライブインの公衆電話で、練習試合の相手を探しながらマイクロバスで北上。お寺や民宿に止まりながら、東北を一周して、夏休みの最終日に、地元・島原へ戻ったという。島原商は翌年のインターハイで九州勢初の優勝を飾った。

山田監督は「考えるより先に行動する小嶺先生の教えは、いまも私の指導の原点だ」と振り返る。

今年度の選手権では、小嶺監督率いる長崎総科大附と、山田監督率いる前橋育英の両校が出場。お互いが勝ち上がれば、準々決勝で激突することになる。過去の選手権での2度の師弟対決は、山田監督の2敗。インターハイなどを含めて一度も勝つことができていないという。師弟対決が実現した場合は、大会屈指の注目カードとなることは必至だ。

==============

DSC_3809.jpg

DSC_3543.jpg
「カッコつけんじゃーね。仲間たちのために、ひたむきにボールを追え」
昨年度の決勝戦・流通経済大柏を前に、山田耕介監督が選手たちに伝えた言葉。試合前日のミーティングで、指揮官は、田部井涼主将(現法政大1年)、ストライカー・飯島陸(現法政大1年)らに、試合への心構えを懇々と説いた。
悲願の初優勝まで、あと1勝。山田監督は、模造紙3枚にびっしりと試合のポイントを書き込み、最後に「スタンドの仲間たちへの感謝」と記していた。そして選手たちに、こう伝えた。

「カッコつけんじゃーね。仲間たちのためにひたむきにボールを追え。これまでやってきた3年間をどんなときも忘れるな」
スコアレスで迎えた決勝戦のアディショナルタイム。榎本樹(2019年松本山雅内定)の決勝点が決まった瞬間、選手たちは黄色に染まったバックスタンドへ疾走。仲間たちと喜びを共有した。
前育では、カッコつけたプレーは不要。チームのために戦う選手だけがピッチに立つことができるのだ。

==============

muroi.jpg
「神様、仏様、室井様」
山田耕介監督が、今年度の選手権群馬県予選決勝後に発した言葉。
群馬県予選決勝の相手は、桐生第一。田中渉(仙台内定)ら能力の高い選手が揃う難敵相手に、前育は苦戦。後半立ち上がりに失点し0−1のままゲームが進む嫌な展開。
冷や汗が出る流れの中で、後半14分にエース・室井彗佑がPKを獲得して、それを自らが決めて同点へ。テクニカルエリアの山田監督は、拳を強く握りしめて、思わずガッツポーズ。後半アディショナルタイムには、室井がペナルティーエリアで執念のボールダッシュ。そのまま反転して、つま先のキックで、劇的な決勝ゴール。室井の2ゴールによって、前育は5年連続の選手権切符をつかみ、連覇への挑戦権を得た。
試合後、山田監督は「みんなが頑張ってくれたが、今日のヒーローは室井だ。まさに神様、仏様、室井様だ」と安堵の表情をみせた。
室井は、去年の大会得点王・飯島陸に続き、前育選手として2年連続の得点王を狙う。

============

akiyama.jpg
「『14』のプライドを持て!」
前育は、チームのキープレーヤーに「14」の背番号を与えることが伝統だ。山田耕介監督が、14番をつけてプレーしたレジェンド・ヨハン クライフを心酔していることに由来している。
過去には、松田直樹(元横浜FM、松本)、近年では鈴木徳真(筑波大4年、徳島内定)、田部井涼らが背負っている。
2018年度の「14」は、来季の新潟加入が内定している本格派ボランチ・秋山裕紀。抜群の攻撃センスと、キック精度を持つ天性のゲームメーカー。だれしもがその能力を認めるが、12月9日のプリンスリーグ最終戦・矢板中央戦では、先発に名前はなく、ベンチからも外れた。
山田監督によると、プリンスリーグ前節の大宮戦でのプレーに甘さがあったとのこと。
指揮官は、試合後に秋山を呼んで面談。「『14』のプライドを持て」と伝えたという。山田監督は「選手権では、裕紀の力が必ず必要になる。今年も、前育の『14』に期待してやってください」と話している。

=======

DSC_6573.jpg
「俺たちはバルサではない。前育だ」
華麗なパスワークと、質の高いサイド攻撃。前育のサッカーは、しばしばバルサに例えられる。
サッカーにおいては最大の賛辞だが、山田耕介監督はそれを素直に受け入れることはない。
「俺たちはバルサではない。前育だ。目指すべきサッカーは、バルサのコピーではなく前育オリジナルのサッカーだ」(山田監督)
黄色と黒のユニフォームに袖を通す前育の選手たちは、前育のスタイルを築き上げるためのパイオニア(開拓者)だ。

前育主義 カバー帯あり.jpg

「前育主義」~逆境でも前進できる人を育む~
山田耕介 著/価格:本体1400円+税/12月14日発売/(株)学研プラス

長い年月で培われた、実績抜群の指導論、教育論、チームマネジメント論
山田監督は、全国の舞台で何度も上位に勝ち進みながら、これまでなかなか優勝できなかったことで、自らを「日本一勝負弱い監督」と語ります。
しかし、2017年度の初優勝を受けて改めて振り返ってみると、4度のベスト4、2度の準優勝、1度の優勝という成績や、その中で70名を超えるプロサッカー選手を輩出してきた実績は、他チームと比べて際立って見えます。山田監督の指導力の高さが改めて証明されました。
そんな山田監督が、長い年月を経て培ってきた、サッカーに対する考え方、指導論、教育論、チームマネジメント法を余すことなく綴ります。日ごろどんな考え方でスタッフ、選手たちに接し、どんな言葉をかけ続けているのも明らかに。
サッカーチームの監督、コーチ、トップレベルを目指す選手はもちろんのこと、他のスポーツの指導者、学校の先生、日ごろ組織を束ねる立場にある人々にも大いに参考になる一冊です。

「前橋育英」の関連記事